研究課題
本年度は、以下の項目について研究成果を得ることができた。①モノリグノール酸化酵素と多糖類との相互作用解析:昨年度は、モノリグノールを酸化する市販酵素として西洋わさびのペルオキシダーゼ(HRP)を用いて、細胞壁構成多糖類との相互作用を消散監視機能付き水晶振動子マイクロバランサ(QCM-D)で解析し、ヘミセルロースよりセルロースに対し、親和性が高いことを明らかにした。本年度は、この相互作用が糖タンパクであるHRPの糖鎖に由来するか、あるいはタンパク画分に由来するのかを、糖鎖を有しないHRPのリコンビナントを調製して調べた。その結果、リコンビナントHRPの方が天然のHRPよりセルロースを含めすべての多糖類に対し大きな吸着量を示し、多糖類と酵素との相互作用は、タンパク画分との相互作用に起因することを見出した。さらに、木本(ポプラ)由来のモノリグノール酸化酵素であるCWPO-Cとの相互作用もQCM-Dを用いて検討した。その結果、この酵素もHRPと同様に、セルロースに対し高い親和性を示すことが明らかとなった。②キシログルカン(XG)が人工リグニン(DHP)の形成に及ぼす影響:木材細胞壁の一次壁に特異的に存在するキシログルカンのリグニン形成に及ぼす影響を明らかにするために、バクテリアセルロースに市販のXGを吸着させ、この多糖類マトリックス存在下でDHPの調製を試みた。その結果、XGはキシランより多量のDHPを多糖類マトリックス内部に堆積させ、さらに、DHP中の5-5’結合も増加させることが、明らかとなった。一次壁のリグニン構造は二次壁と異なり縮合構造に富むことは示されていたが、これが、XGの影響因ることが、本研究で初めて実験的に証明された。以上の結果は、研究当初には想定できなかったことであり、木化に関する修正モデルを作成し、提案するに至った。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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