研究課題/領域番号 |
18H03956
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 進一 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (00371790)
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研究分担者 |
松山 倫也 九州大学, 農学研究院, 教授 (00183955)
橋岡 豪人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球表層システム研究センター, 研究員 (00463092)
米田 道夫 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (30450787)
北川 貴士 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50431804)
高橋 素光 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 西海区水産研究所, グループ長 (80526989)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水産動物 / 生態・行動 / 水圏環境 / 生物環境 / 生活史 |
研究実績の概要 |
カタクチイワシは「呼吸代謝に関する水温依存性、体重依存性、遊泳速度依存性が異なる個体が存在するために、異なる生息海域、回遊海域を選択している」、そして、カタクチイワシ属は「種によって呼吸代謝に関する水温依存性、体重依存性、遊泳速度依存性が異なるために、それぞれの種の生息海域、回遊経路の特徴が異なっている」という仮説を検証し、世界各地に生息するカタクチイワシ属の生活史戦略を回遊に伴うエネルギーバランスの側面から解明することを目的とした。 平成30年度は、カタクチイワシの遊泳に伴う呼吸代謝とその水温依存性、体重依存性、遊泳速度依存性をスタミナトンネル水槽(閉鎖型循環水槽)を用いて直接測定する実験系を確立するため、5Lのスタミナトンネル水槽を購入し、システムの立ち上げを行った。水槽内の水温をモニターする水温計にノイズ信号が発生する問題に直面したが、水槽内に水流を発生させるモーターにかかわるノイズが原因であることを突き止め、対策を講じることができた。また、6~7月には唐津市水産業活性化支援センターにてカタクチイワシを用いた呼吸代謝実験を実施し、実験系を確立した。ただし、カタクチイワシは、接触などによって鱗が剥がれやすく、また周囲の環境変化に敏感に応答するため、水槽内での実験によるストレスが大きいことが判明した。11~12月には、瀬戸内海区水産研究所伯方島庁舎にて、スタミナ水槽に複数匹のカタクチイワシを入れることでストレスを下げた状態を実現し、呼吸代謝実験を実施し、呼吸代謝データを取得した。 また、東シナ海のカタクチイワシ仔稚魚を対象に開発したモデルの改良方針を検討し、全生活史を表現できるモデルを開発をせず、成魚になるまでの回遊過程に焦点を絞ったモデル開発を実施する方針を立てた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の計画として1)カタクチイワシの呼吸代謝測定の実験系確立と2)カタクチイワシの成長ー回遊モデル開発を上げていた。実験系の確立はでき、実際に呼吸代謝に関するデータを取得することができた点、予定よりも進捗している。ただし、カタクチイワシが実験水槽内で予想以上にストレスを感じているため、実験の成功率が低く、データを得るために多大な時間を要することがわかり、今後の進捗に大きな課題となっている。 また、モデル開発については、当初は産卵を含む全生活史を対象に考えていたが、本研究が掲げる仮説の検証には、成魚になるまでの過程をモデル化すれば十分であるという結論に至った。これらのことから、総合的に判断すると、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度得られたカタクチイワシの呼吸代謝データの解析を進めるとともに、太平洋岸で採取されるカタクチイワシを対象に、東京大学大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センターにて、呼吸代謝とその遊泳速度依存性をスタミナトンネル水槽(閉鎖型循環水槽)を用いて直接測定する。呼吸代謝の体重依存性については、得られるカタクチイワシのサイズ組成に大きく依存するため、状況を見て実験対象とするか判断をする。また、水温依存性については実験施設における飼育海水の状況に依存するため、環境が整った場合にのみ実施する。 また、カタクチイワシ成長-回遊モデルの改良を進めるとともに、カタクチイワシ成長-回遊モデルを駆動するための海洋環境を提供する低次栄養段階生態系モデルを用いた数値実験を実施する。
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