研究課題/領域番号 |
18H03959
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福島 和彦 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (80222256)
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研究分担者 |
松下 泰幸 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60335015)
青木 弾 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (80595702)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | TOF-SIMS / 前駆物質 / 貯蔵 / 定量分析 / イメージング分析 |
研究実績の概要 |
飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によって不均一な生体組織あるいは複合材料中における微量成分の定性的な分布評価が可能である。申請者はこれまでに、急速凍結させた試料を連続的に切削することにより、細胞(細胞壁)内にあるがままに存在するあらゆる構成成分の三次元分布を、分子レベルで可視化する複合装置(クライオTOF-SIMS/SEM システム)を世界に先駆けて開発してきた。本研究ではリグニン前駆物質の輸送・貯蔵に関わる細胞間ネットワークの解明を目的とし、凍結した植物試料内での様々な化合物の動態可視化を試みる。 (1)二次木部の各種組織の木化における同種・異種細胞間の相互作用 樹木二次木部ではほとんどの細胞が木化するため、二次壁の木化に必要な多量のリグニン前駆物質が周辺細胞から供給される可能性は低く、液胞内に貯蔵された前駆物質が用いられるか、形成層付近の若い同種細胞から放射組織経由で供給されることが想定される。第一年度は当研究グループで育成実績のある苗木を用いてリグニン生合成に関与する化学物質の植物内動態可視化に取り組んだ。具体的には植物内の周期的動態を明らかとするための周期性サンプリングを行い、リグニン前駆体が周期的な量的変化を有する可能性を示した。 (2)微量成分・高分子量成分を対象とした新規イメージング法の開発 生体試料内には様々な微量有機成分ならびに高分子成分が含まれているが、従来のTOFSIMS法では分析の難しい化合物も多い。そこで従来法では分析困難であった成分を対象とした新規イメージング法の開発に取り組んだ。具体的には一般的な測定条件でのTOF-SIMSでは検出の困難な化合物に対して、高分子量での分子検出が可能となるような前処理法を検討した。結果より、脂質系分子可視化に関する成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TOF-SIMS装置のメンテナンスは当初計画にも盛り込まれていたものの、必要な物品の納期長期化によって、年度内に完了することが困難となった。そのため、2018年度予算の繰り越し申請を行った。しかしながら他の実験・分析自体は停止しなかったこと、ならびに年度内にメンテナンスでTOF-SIMSが停止する期間は事前に織り込んでいたことから、この繰り越し申請に関する実験の遅れは生じていない。また当初計画であった植物内のターゲット化合物の動態ならびに新規可視化手法の検討について、具体的な成果が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の実験結果により、リグニン前駆体が植物内で周期的な動態を有しており、可視化できる可能性が示された。第二年度ではサンプリング計画を全面的に見直し、より精度・確度を高めるべく実験を行う。また新規イメージング法の開発については計算化学的手法を導入し、初年度に得られた手法の効率的な解析を実現する。
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