研究課題/領域番号 |
18H03961
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
伴 修平 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50238234)
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研究分担者 |
丸尾 雅啓 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (80275156)
後藤 直成 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40336722)
尾坂 兼一 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (30455266)
齋藤 光代 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20512718)
小野寺 真一 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (50304366)
奥田 昇 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (30380281)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 正リン酸 / リン酸酸素安定同位体比 / 深層地下水 / 植物プランクトン一次生産 / 琵琶湖北湖 |
研究実績の概要 |
1)琵琶湖東岸および西岸における地下水流出と地下水経由のリンの寄与を推定するため、湖水・地下水・周辺湧水の採水およびラドン(222Rn)モニター調査を行った。山地渓流のリン酸濃度が0.05mg/l以下と低濃度であるのに対して、湖岸沖積層周辺の浅層および深層(被圧)地下水のリン酸濃度は0.1mg/l以上と明らかに高濃度であり、リンのソースとして沖積堆積物中の有機物が影響している可能性が示唆された。 2)2018年4~9月の期間、毎月一回、琵琶湖北湖沖合の定点(K4)にて、正リン酸の鉛直プロファイルを得た。調査期間を通して、表層30 m以浅において、正リン酸濃度は0.03 uMを上回ることはなかった。一方、30 m以深においては5月と9月に一時的な増加が認められた。リン添加実験では、琵琶湖北湖の植物プランクトン群集は、調査期間を通してリン制限下にあることが示唆されたが、4月と9月にはリン不足が緩和されたことが示された。また、現場植物プランクトンの増殖には、少なくとも0.02 uMの正リン酸が必要であることが分かった。 3)琵琶湖盆における地下水由来リンの寄与を推定するため、湖水・地下水・湖底堆積物間隙水のリン酸-酸素同位体比(δ18Op)を測定した。地下水のδ18Op値は涵養域によって変異するものの、同一地点では季節変動しなかった。堆積物中の易溶性リンのδ18Op値は地下水の値に近似した。 4)琵琶湖北湖多景島沖定点(K4)において、植物プランクトンの一次生産速度を連続的に測定し、各環境因子との関係性を評価した。観測期間中、植物プランクトンの一次生産速度は0.10~3.92(平均1.11)g C /m2/dの範囲を変動し、春期から秋期(4-10月)に増加し,冬期(1-3月)に低下する傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、概ね順調に進んでいるものの、湖水中のリン酸塩濃度が低いためにリン酸酸素安定同位体比の定量に苦戦している。今年度は、大容量の湖水を処理するシステムの構築を考えており、これによって定量を試みる。 また、懸濁態リンの動態解析については、昨年度は調査予定の21河川を選出したものの、調査は実施しなかった。本年度は、これら選定した河川において、湖水中の生物利用性の高い懸濁態リン画分の測定、あるいは湖底堆積物中のそれら画分についての測定を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
琵琶湖に流入するリンの動態を明らかにするため、昨年度、琵琶湖北湖流入河川を21本選定した。これらにおいて、平水時と降雨時に採水を行う。採水は共に1-2ヶ月に一度の頻度とし、試水からは各種リン濃度の測定を行い、各河川から琵琶湖へのリンの形態別流入量を見積もる。 昨年同様に、正リン酸の時空間分布調査を行う。特に、田植え期の5月には集中的に実施する。同時に、懸濁態リンの動態調査、および沿岸湖底堆積物中のリン画分の調査も行い、湖水中の正リン酸の時空間分布との関係を解析する。 地下水調査については、現地観測、SWATモデル解析、沖積層コア試料の分析を継続する。滋賀県立大学構内に設置した観測井の地下水の水位および水質変動から、琵琶湖深層地下水湧出量の季節変動およびリン供給量(湖の貧酸素水塊分布を踏まえて推定)の変動について見積もる。 リン酸濃度が低い湖水のδ18Opを測定するために、大容量水試料を処理するシステムの構築を目指す。また、地下水のδ18Opの地理的変異に及ぼす地質の影響を検討するため、涵養域の岩石試料のδ18Op分析を試みる。その関係性に基づいて、琵琶湖盆に対する外部リン負荷源としての地下水δ18Opマップの作成可否を検討する。 昨年度から実施している、植物プランクトン一次生産から動物プランクトン生産への転換効率を求めるための擬似現場実験は、今年度も引き続き実施する。2年間に渡る擬似現場環境での動物プランクトン成長速度の測定を通して、水温、TP、個体数密度と動物プランクトン成長速度の関係式を作成する。これによって、過去40年以上に渡る動物プランクトン生産量を計算できるようになる。 植物プランクトン一次生産については、これまでに得られたアルゴリズムを用い、衛星画像を使った琵琶湖北湖全域におよぶ植物プランクトン量の取得を目指し、これをもとに一次生産を求めることを試みる。
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