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2019 年度 実績報告書

土壌の表面特性と微生物を活用した土壌・水・大気保全技術の確立

研究課題

研究課題/領域番号 18H03963
研究機関北海道大学

研究代表者

石黒 宗秀  北海道大学, 農学研究院, 教授 (00294439)

研究分担者 柏木 淳一  北海道大学, 農学研究院, 講師 (40241369)
波多野 隆介  北海道大学, 農学研究院, 教授 (40156344)
内田 義崇  北海道大学, 農学研究院, 准教授 (70705251)
荒木 肇  北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (30183148)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード土壌 / 微生物 / 物質循環 / 汚染物質 / 環境保全 / 窒素 / 自然栽培稲作 / メタンガス
研究実績の概要

本研究の目的は,肥料成分や放射性物質・界面活性剤・温室効果ガスなどの汚染物質の土壌中における動態を,土壌の表面特性と微生物活動に着目して明らかにし,その知見を用いて,土壌・水・大気保全技術を確立することである.本年度は,昨年度に引き続き次の研究を行った.
a. 窒素:無肥料無農薬水田における窒素の動態に及ぼす中耕除草の影響を明らかにするために,無肥料無農薬水田において,中耕除草0回区,2回区,5回区を設定すると共に,化学肥料と農薬を使用する慣行区を設定し,比較検討した.2年目の本年度も,作物生育と窒素量に関して,中耕除草回数による有意な相違は認められず,土壌が良好な状態になるには更に年数が必要と考えられた.
b.リン酸:リン酸についても,中耕除草研究において比較検討した.本年度も,中耕除草区・慣行区の間で作土土壌溶液中のリン酸濃度と可給態リン酸濃度に差が認められなかった.可給態リン酸濃度の経時変化を調べたところ,昨年度,田植え時が最も高く,収穫時まで徐々に減少したが,本年度田植え時に昨年度の田植え時と同程度に回復し,その後収穫時まで徐々に低下した.可給態リン濃度が,作物生育による吸収で低下した後,翌年度の春に回復することがわかった.
c. 界面活性剤:水フラックスがアニオン性界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの多腐植質土壌中における吸着移動に及ぼす影響について実験的に検討し,水フラックスが大きくなると流出が初期に多くなるが,十分な時間経過で最大吸着量は一定になり,電解質溶液で洗い流すと吸着時より時間がかかるものの全量脱着し,土壌中では分解反応が起こらないことがわかった.
d. 温室効果ガス:水田から排出されるCH4の温室効果ガス発生量を調べたところ,本年度は,無肥料無農薬中耕除草区は,慣行区と比較して発生量が大きくなり,昨年度と反対の結果となった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

自然栽培稲作における明瞭な中耕除草の効果が認められなかったが,アンモニア態窒素,吸着態窒素においては,中耕除草が大きなほど大きな値を取る傾向が見られた.中耕除草をしなくても未だ雑草が繁茂せず,長年の農薬散布の影響が表れていたものと考えられ,今後の変化が期待される.
アニオン性界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの多腐植質土壌中における吸着と脱着の実験で,河川中で良く分解されるにもかかわらず,水で飽和された土壌中では分解されずに移動することがわかった.
中耕除草水田において,メタンガスが中耕回数が多いほど多く発生する結果となり,昨年度と異なる結果となったが,今後の重要な検討課題が明瞭になった.

今後の研究の推進方策

これまでと同様,無肥料無農薬水田における窒素等養分の動態に及ぼす中耕除草の影響を明らかにするために,無肥料無農薬水田において,中耕除草0回区,2回区,5回区を設定すると共に,化学肥料と農薬を使用する慣行区を設定し,比較検討する.育苗に問題があったため,循環式催芽機を用いて発芽率を向上させ,自然栽培区・慣行区とも,農薬を使用しない温湯消毒法を採用して育苗条件を同じにして稲の生育を観察する.3年目の土壌中養分および稲の生育を調査するとともに,既に長年自然栽培稲作を行っている水田土壌を用いて,土壌微生物と窒素固定反応を調査する.
昨年度まで,用排水系統を単純化するため,中耕除草区間に物理的な障壁を配置していなかったが,各区の相違を明瞭に調査するため,各区毎に用排水口を設けて独立させる.
界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの多腐植質土壌中への吸脱着実験をバッチ法で行い,吸脱着量と時間の関係を測定し,吸脱着が移動現象に及ぼす影響を考察する基礎データとする.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] ラオス国立大学(ラオス)

    • 国名
      ラオス
    • 外国機関名
      ラオス国立大学
  • [雑誌論文] Water, solute transport, and interfacial electric phenomena in soils2019

    • 著者名/発表者名
      Ishiguro Munehide
    • 雑誌名

      Soil Science and Plant Nutrition

      巻: 65 ページ: 223~227

    • DOI

      10.1080/00380768.2019.1601501

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 土壌中における溶質の吸着移動現象の基礎理論 Ⅱ.ラングミュアの吸着式2019

    • 著者名/発表者名
      石黒 宗秀
    • 雑誌名

      土壌の物理性

      巻: 141 ページ: 85-90

    • 査読あり
  • [学会発表] Effect of water flux on anionic surfactant transport in highly humic soil2019

    • 著者名/発表者名
      Li, A., M. Ishiguro, S. Kosugi
    • 学会等名
      土壌肥料学会
  • [学会発表] Study of inter-tillage weeding in paddy field without fertilizer and agricultural chemical: First year result2019

    • 著者名/発表者名
      Soluttanabong, V., 石黒宗秀,柏木淳一,荒木肇,周佩陽
    • 学会等名
      土壌肥料学会
  • [学会発表] 無肥料無農薬水田における表層土壌の変化とメタン排出2019

    • 著者名/発表者名
      沼館知也・波多野隆介・石黒宗秀
    • 学会等名
      土壌肥料学会
  • [学会発表] Nitrogen dynamics of inter-tillage weeding in paddy field without fertilizer and agricultural chemical in 2018 and 20192019

    • 著者名/発表者名
      周佩陽・石黒宗秀・柏木淳一・V. Soluttanabong
    • 学会等名
      土壌物理学会
  • [学会発表] Investigation of how inter-tillage weeding and no-tillage affect distribution of Nitrogen fixation microbes within Natural Farming rice paddy2019

    • 著者名/発表者名
      J.F. Lin, E.M.L. Minarsch, Munehide Ishiguro, Yoshitaka Uchida
    • 学会等名
      The East and Southeast Asian Federation of Soil Science Societies
    • 国際学会
  • [学会発表] The effect of inter-tillage weeding and no-tillage on the distribution of nitrogen-fixing microorganisms in natural farming rice paddy2019

    • 著者名/発表者名
      J.F. Lin, E.M.L. Minarsch, M. Ishiguro, Y. Uchida
    • 学会等名
      日本生態学会北海道地区

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公開日: 2021-01-27  

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