研究課題/領域番号 |
18H03964
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
伊藤 大雄 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (00333716)
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研究分担者 |
石神 靖弘 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (50361415)
叶 旭君 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (10708168)
荒川 修 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (70184265)
遠藤 明 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (70450278)
加藤 千尋 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (60728616)
青山 正和 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (60150950)
森谷 慈宙 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (30539870)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気候変動 / 環境制御 / リンゴ |
研究実績の概要 |
2015年に植え付けた2列×8樹の3つのリンゴ個体群(列間3m、樹間2m)に対し、10月上旬にそれぞれを内包するビニールハウス(A棟、B棟、C棟)を建設した。A棟(対照棟)は天井面のみビニールで被覆したハウス、B棟(高温棟)は換気扇、循環扇、側面フィルム巻き上げ装置に暖房装置を備えたハウス、そしてC棟(高温高CO2棟)はB棟の設備に加えて冷房装置とCO2発生装置を備えたハウスである。10月中旬にはB棟とC棟に独自に設計した自動制御プログラムを導入し、ハウス内外の気温とCO2濃度を常時モニタリングしながら、B棟内は屋外より気温が常に3℃高く、またC棟内は屋外より気温が常に3℃、CO2濃度が200ppm高く保たれるよう制御した。更に11月上旬からは自作した自動灌水装置を各ハウスに導入し、各棟の北側は少なめの灌水量(少灌水区)、南側はその1.5倍の灌水量(多灌水区)となるよう制御した。 ハウス建設前の5月には予備調査として供試圃場の土壌化学性を調査した。また、リンゴ樹には通常の栽培管理を実施するとともに、収穫果実の重量・品質、剪定枝量、着葉量、幹肥大量などを樹別に詳細に調査した結果、供試圃場は概ね均質で処理開始時(本年11月)には各棟各区の間に有意な差が生じていないことを確認した。 4月から、C棟標準灌水区の予定地において、土壌中CO2濃度の測定を複数の手法で先行して開始し、その季節変動の実態を明らかにするとともに、数理モデルによる季節変動の再現を試みた。また、供試圃場の炭素・窒素動態解明の一環として年間5回の下草刈り取り時に刈草量を調査し、炭素・窒素含有量測定のための試料を採取した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は環境制御可能なビニールハウス3棟を、予め用意したリンゴ個体群を内包するように建設することが最も重要であった。採択された予算額が当初要求より削減されたため、軒高や奥行きを制限し、多数の企業に問い合わせて安価に建設できる道を探った結果、完成は10月にずれこんだが、今後の実験実施が十分可能な施設を建設することが出来た。 温室内環境制御プログラムは、業者と綿密に打ち合わせの上外注した結果、ハウス完成後2週間以内に導入することが出来た。導入後も改良を加え、まだ改善の必要はあるものの、概ね目標通りの環境制御が実現している。 ハウス内環境の3次元表示システムの開発研究には着手出来なかったが、研究計画を立案して既に必要な機材を調達した。
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今後の研究の推進方策 |
今後4年間は、A(対照)、B(高温)、C(高温高CO2)の3棟のビニールハウスにおいて、それぞれ少灌水区と多灌水区を設定し、3月15日から11月30日まで目標に沿った環境制御を実施して、下記1)~4)の各種調査を行う。またB・C棟の環境制御プログラムを早急に精緻化するとともに、ハウス内環境の3次元表示システムを開発する。 1)【リンゴ樹】高温によるフェノロジー変化を明らかにするために各棟・各品種の発芽日、開花日、果実成熟日や落葉日を調査する。また、高温/高CO2が光-光合成関係やCO2-光合成関係に及ぼす影響を明らかにするために、各棟の個葉数枚に対して、一時的に光強度やCO2濃度を変化させながら光合成速度を測定する。またハウスを一定時間密閉し、ハウス内CO2濃度の減少速度を計測して個体群光合成速度の評価を試みる。更に、各棟各区の剪定量、収穫量、幹周長などを品種別に調査する。 2)【果実】各棟各区・各品種の花芽分化や果実肥大を経時的に調査するとともに、収穫果実における糖の含有量と組成、酸の含有量、硬度や果皮・果肉の着色などを調査する。2020年以降は各棟果実の貯蔵性の差異も調査する。 3)【土壌呼吸速度】CO2濃度測定機器を各棟各区の2深度に埋め込み、土壌中CO2濃度を経時的に測定するとともに、数理モデルを活用してその濃度変動を再現し、土壌呼吸の高温・高CO2による影響を明らかにする。 4)【水分・窒素・土壌有機物の動態解析】各棟各区土壌の2深度において、土壌水分、地温ならびに電気伝導度を継続的に調査するとともに、適宜土壌水を採取して硝酸態ならびにアンモニア態窒素濃度を計測し、数理モデルに入力して、水分移動と窒素溶脱の実態を解明する。更に各棟各区における土壌有機物や葉・枝・果実、刈草中の炭素・窒素含有量を調査し、土壌呼吸や窒素溶脱の結果と併せて、炭素・窒素動態を総合的に解明する。
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