研究実績の概要 |
本研究は、「制限増殖性ウイルスを基盤とする動物インフルエンザの統括的制御」という題目で二つの柱で構成される。A. 1回感染型非増殖性ウイルスの鳥インフルエンザワクチンへの応用、および B. 哺乳類インフルエンザの制御法の開発を最終目的とする。 本年度は、B項目を中心に研究を進めた。パンデミックウイルス出現に必要な中間哺乳動物として豚が重要な役割を占めると考えられているが、近年の伴侶動物への感染例の増加から、伴侶動物にもその潜在性があると推測されるため、伴侶動物インフルエンザウイルスがパンデミックウイルスに変異する可能性を評価した。この目的のため、イヌインフルエンザウイルスおよびネコインフルエンザウイルスが、人由来の呼吸器上皮培養細胞に馴化するかを調べ、馴化した場合の遺伝子変化を調べた。その結果、イヌH3N8インフルエンザウイルスとネコH7N2インフルエンザウイルスが、連続継代によりヒトA549細胞に馴化することがわかった。馴化により細胞増殖性がそれぞれ10,000倍以上に上昇した。次に、馴化ウイルスの遺伝子変化を調べたところ、イヌH3N8馴化株にはHAとNA遺伝子に変異が集中しており、PB2, PA, NP, M遺伝子にも一部変異が見られた。一方、ネコH7N2馴化株にもHAとNA遺伝子に変異が集中していた。これらの結果は、ウイルスのレセプター特異性や膜融合性状の変化が、これら伴侶動物インフルエンザウイルスが人に馴化するためには重要になる可能性が示唆された。
|