研究課題
本研究は、「制限増殖性ウイルスを基盤とする動物インフルエンザの統括的制御」という題目で二つの柱で構成される。A. 1回感染型非増殖性ウイルスの鳥インフルエンザワクチンへの応用、および B. 哺乳類インフルエンザの制御法の開発を最終目的とする。本年度の項目Aについて、昨年度作出した近年日本に侵入した高病原性H5ウイルス由来のH5-HAヘッドドメインをもつH4弱毒型ウイルスをベースとする組換えキメラウイルスの増殖性が低いことが判明した。そこで、H5-HA配列をより短くしたキメラウイルスを作出したところ、増殖性に優れる組換えウイルスの選択に成功した。さらに、組換えウイルスに制限増殖性を賦与するために、NA分節にレポーターGFP遺伝子を搭載したキメラウイルスの作出にも成功した。本ウイルスは、鼻腔噴霧型の鳥インフルエンザワクチン候補株として有望である。本年度の項目Bについて、ネコH7N2ウイルス(PB2欠損非増殖型)のヒト型レセプター(α2-6シアル酸)のみを発現するMDCK細胞(ヒト型細胞)での連続継代実験を実施し、増殖性が上昇した馴化ウイルスを選択した。馴化ウイルスには複数の変異が認められたため、各変異をもつ組換えウイルスをリバースジェネティクス法により作出し、ヒト型細胞での増殖性を調べた。その結果、HAの受容体結合領域のHA1-K193R変異がヒト型糖鎖への結合性を上げること、HAストーク領域のHA2-M115IやHA2-L167S変異が膜融合活性のpH閾値を上昇させることで、ウイルスがヒト型細胞に馴化したと推測された。したがって、ネコH7N2ウイルスは、わずかな変異でヒト呼吸器細胞に適応しうると考えられ、ワクチン開発の重要性が考察された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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