研究課題/領域番号 |
18H03973
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
束村 博子 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (00212051)
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研究分担者 |
松田 二子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10608855)
大蔵 聡 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20263163)
平林 真澄 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 准教授 (20353435)
上野山 賀久 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70324382)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | キスペプチン / GPR54 / GnRH / メタスチン / エストロゲン |
研究実績の概要 |
本研究は、家畜やヒトを含む哺乳類メスにおける「卵胞発育」と「排卵」を制御する性ステロイド (エストロゲン) のフィードバック機構に着目し、卵胞発育を支配する負のフィードバック、および排卵を支配する正のフィードバックによる性腺刺激ホルモン分泌制御の分子メカニズムの解明とその応用の検証を目的とする。性腺刺激ホルモン分泌は視床下部からの性腺刺激ホルモン分泌放出ホルモン(GnRH)により制御され、GnRH分泌はさらに上位のキスペプチンニューロンにより支配される。本研究では、特に視床下部弓状核(ARC)キスペプチンニューロン (卵胞発育中枢)、および前腹側室周囲核(AVPV、種によっては視索前野)のキスペプチンニューロン (排卵中枢) において、エストロゲンがARCでは抑制的にAVPVでは促進的に、キスペプチン遺伝子(Kiss1)発現とキスペプチン分泌を制御する細胞内分子メカニズムの解明を目指すものである。本年度の研究実施により、泌乳ラットをモデルとし、キスペプチンの放出を抑制する神経伝達物質として、脳内のソマトスタチンの役割を明らかにし、論文化した。また、性成熟のおけるKiss1発現増加の重要性を示した。さらに、Kiss1発現を制御するエピジェネティック制御分子の機能解析の一環として、ラットARCのキスペプチンニューロンに高発現が認められたヒストン修飾関連タンパク質RBBP7に注目し、RBBP7のキスペプチン遺伝子発現に対する促進的は役割を明らかにした。さらに、反芻家畜のモデルとして、ヤギキスペプチンニューロン由来の不死化細胞株を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究費を繰り越しした結果、Kiss1発現を仲介するエピジェネティック因子として、RBBP7の役割を解明し、またキスペプチン放出抑制を担う因子としてソマトスタチンの関与を明らかにし、これらの成果を論文として報告できたことから、概ね順調に進捗したと考える。さらに反芻動物のキスペプチンニューロンの不死化細胞株の確立について成果を得たことから、概ね順調に進捗したと考える。 1)Kiss1発現を制御するエピジェネティック制御分子の機能解析:雌ラットの脳を用いた組織学的解析により、ヒストン修飾関連タンパク質retinoblastoma-binding protein 7(RBBP7)遺伝子(Rbbp7)が、キスペプチンニューロンに共発現することを明らかにした。次に、マウス弓状核由来のキスペプチンニューロン不死化細胞株を用い、Rbbp7発現をノックダウンしたところ、Kiss1発現が有意に減少したことを示し、、RBBP7がエストロゲン非依存的に、キスペプチンニューロンにおけるKiss1発現の発現を仲介するヒストン修飾関連因子である可能性を示唆した。 2)黄体形成ホルモン(LH、GnRHの指標)分泌が顕著に抑制される泌乳ラットをモデルとし、脳内にソマトスタチン受容体拮抗剤を投与したところ、LH分泌抑制が阻害されたことから、ソマトスタチンがARCキスペプチンニューロンからのキスペプチン放出を抑制する上位の因子であることを示唆し、この成果を報告した。 3)ヤギキスペプチンニューロン由来不死化細胞株の樹立:シバヤギ弓状核を含む視床下部組織片を用い、不死化処理によりキスペプチンニューロン不死化細胞株を樹立した。さらに、エストロゲンがKiss1発現を抑制することを示し、この細胞株の反芻動物ARCキスペプチンニューロンのモデルとしての有用性を示し、この成果の論文化の準備を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の本課題の研究実施により、エピジェネティック制御分子の機能解析の一環として、ヒストン修飾関連タンパク質RBBP7のキスペプチン遺伝子発現における促進的役割を明らかにすることができた。今後は、他のエピジェネティック制御候補因子やエストロゲン受容体コファクターのKiss1発現にける役割解析を実施する予定である。また、ソマトスタチンによるキスペプチン放出抑制がARCキスペプチンニューロンへの直接の効果であるか否かを検証する予定である。さらに、予備実験により視床下部室傍核に局在するダイノルフィンニューロンがARCキスペプチンニューロンからのキスペプチン放出抑制を仲介する可能性を示す結果を得たことから、ダイノルフィンがARCキスペプチンニューロンを直接抑制し、キスペプチン放出を制御するかどうかを検証する予定である。加えて、エストロゲンによりKiss1発現が抑制された同ニューロンを同定するための常時キスペプチンニューロンを可視化した遺伝子改変ラットの作製に成功したことから、この遺伝子改変動物を活用し、エストロゲンによるKiss1発現制御因子の機能解析に資する予定である。
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