研究課題
細胞の保持する品質管理機構は、異常な遺伝子産物を認識し排除することで遺伝子発現の正確性を保証している。研究代表者は、翻訳停止に起因する品質管理機構を世界に先駆けて発見し分子機構の解明を進めている。昨年までに本研究課題で、翻訳品質管理の標的となる2つのリボソームが衝突して停滞した構造を、クライオ電顕で解明した(EMBO J, 2019)。内在性の停滞配列を世界で初めて発見し、その停滞メカニズムを、構造生物学や遺伝学や生化学的な手法で解明した (NSMB, 2020)。またヒトにおけるRQT複合体を同定した(Sci Rep, 2020)。今年度はRQCならびにリボソームユビキチン化の生理機能の解明を行なった。RQCの機能不全は進行性の神経変性と運動機能障害を引き起し、RQC因子の異常は神経筋疾患や自閉症の患者で確認されている。RQCの機能不全による細胞障害の原因にCATテイル化異常タンパク質の蓄積が関わることを明らかにした(Cell Rep. 2021a)。翻訳の伸長異常を感知する品質管理機構は、タンパク質合成の異常だけでなく、共翻訳的な配送異常も認識し排除する機構を解明した。タンパク質の凝集体形成やミトコンドリアの機能不全に繋がる分泌系タンパク質の配送異常を、RQCがタンパク質の合成段階で識別する予防的なしくみを明らかにした(Cell Rep. 2021b)。リボソームユビキチン化の生理機能について解析を行い、出芽酵母における小胞体ストレス時の新規な翻訳制御機構を発見し、E3ユビキチンライゲースNot4によるリボソームタンパク質eS7のユビキチン化が必須であることを明らかにした(Sci. Rep. 2020)。またmRNA安定性決定機構としてCcr4-NOTが翻訳伸長速度を感知して分解速度を決定する分子基盤を明らかにした(Science, 2020)。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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http://www.inada-lab.ims.u-tokyo.ac.jp/publication/