研究課題
2019年2月に、初期分泌経路のタンパク質品質管理を担うERp44の亜鉛依存的な構造機能制御に関する仕事をまとめNature Communicationに発表した。そこで2019年度は、初期分泌経路に存在する亜鉛トランスポーターのうち、主としてどの因子がERp44の機能を制御するのかを系統的ノックダウン実験により明らかにした。さらにER, ERGIC, シス、ミディアル、トランスゴルジのサブオルガネラにターゲッティングされる亜鉛蛍光プローブを本学の水上進教授のグループと共同で開発し、それを用いて各サブオルガネラにおける亜鉛濃度の定量、および亜鉛濃度制御を司る亜鉛トランスポーターの同定を行った。以上の結果から、亜鉛トランスポーターを介したERp44の機能制御機構の詳細が解明され、現在論文執筆を開始したところである。これら研究成果について、2019年5月にドイツで開催されたER-Redox meetingや9月に京都で開かれた亜鉛国際会議で招待講演を行った。また日本蛋白質学会や分子生物学会のシンポジウムでも招待講演を行った。一方、もう一つの重要な課題である亜鉛トランスポーターの構造解析について、ERp44の機能制御を担う主たる亜鉛トランスポーターのX線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡単粒子解析を精力的に進め、特にクライオ電子顕微鏡を用いた解析では、12Å分解能の全体構造の電子密度マップが得るに至った。現在、さらなる分解能向上を目指し、この亜鉛トランスポーターとモノクローナル抗体Fabフラグメントとの複合体の構造解析に取り組んでいる。
2: おおむね順調に進展している
昨年度の第一目標として、ERp44の機能制御を担う亜鉛トランスポーターの同定、ならびに新しく開発した亜鉛蛍光プローブを用いた初期分泌経路における各サブオルガネラの亜鉛濃度定量とそれを司る亜鉛トランスポーターの同定を挙げていた。これらいずれの課題も達成したため、おおむね順調に進展していると判断した。一方、亜鉛トランスポーターの高分解能構造解析にはまだ至っていないため、当初の計画以上に進展しているとは結論できない。
ERp44を制御する亜鉛トランスポーターの同定及び亜鉛蛍光プローブを用いた各サブオルガネラにおける亜鉛濃度定量に関する話を関連づけ、フルペーパーを発表することを最優先に置く。さらにERp44を制御する主たる亜鉛トランスポーターの高分解能構造解析に向け、現在特異的に認識するモノクローナル抗体を作製中であり、それが作製でき次第Fabフラグメント化し、亜鉛トランスポーターとの複合体を調製する。その上で、クライオ電子顕微鏡単粒子解析を主たる手法として用い、2020年度中の高分解能構造決定に全力を注ぐ。
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