研究実績の概要 |
DNA に蓄えられた遺伝情報は一時的にmRNA にコピーされ、リボソームによってタンパク質に翻訳される。翻訳の制御は、生命活動の根幹に関わる重要なプロセスである。本研究では、新たな遺伝子発現制御機構として注目されている以下の3つの翻訳発現制御について、翻訳制御の分子機構を明らかにする。本年度の研究成果は以下の通りである。 1.miRNA による遺伝子発現制御 蛍光標識miRNAが機能を保っているか調べた。標的 mRNA 発現プラスミドを導入し、導入 miRNA 前駆体が標的 mRNA の翻訳を抑制していることを確認した。 2.翻訳アレストによる遺伝子発現制御 新生SecM鎖のリボソーム外領域による翻訳アレストの安定化にD79, Y80, W81, H84, R87, I90, R91, F95が寄与していることが分かった。また、Y80, W81およびF95にBpaを導入し、光架橋反応を利用して接触している分子を調べた。その結果、架橋相手はリボソームタンパク質uL23であると同定された。また、SecMに加わる力と、翻訳アレストが解除されるまでの時間の関係を測定する実験系の構築を行った。 3.ストレス顆粒による遺伝子発現制御 SGを誘起するストレスを負荷する前後において蛍光寿命測定を行った。その結果、どちらのストレス時も細胞内平均温度が1.4℃上昇した。これにより、SG形成時に細胞内温度が上昇することが分かった。また、細胞内に高濃度の温度感受性ポリマーを注入するとSG形成が阻害された。SGの形成にはコア構造の形成と成長の二段階があることが知られているが、高濃度の温度感受性ポリマーがSGコア構造の形成段階だけを阻害することを確認した。以上の結果より、細胞内温度上昇が緩和されるとSG形成の初期段階が阻害されると分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.miRNA による遺伝子発現制御 蛍光標識したmiRNA前駆体を合成し、細胞内に直接導入することで内在性の生合成過程を通して成熟させた。これにより、細胞内miRNA可視化法を確立できた。また、蛍光標識したmiRNAが機能を有していることを標的mRNAの発現抑止により確認できた。 2.翻訳アレストによる遺伝子発現制御 新生SecM鎖のリボソーム外領域による翻訳アレストの安定化にD79, Y80, W81, H84, R87, I90, R91, F95が寄与していることが分かった。また、Y80, W81およびF95にBpaを導入し、光架橋反応を利用して接触している分子を調べた。その結果、架橋相手はリボソームタンパク質uL23であると同定された。 3.ストレス顆粒による遺伝子発現制御 細胞内に高濃度の温度感受性ポリマーを注入するとSG形成が阻害された。SGの形成にはコア構造の形成と成長の二段階があることが知られているが、高濃度の温度感受性ポリマーがSGコア構造の形成段階だけを阻害することを確認した。以上の結果より、細胞内温度上昇が緩和されるとSG形成の初期段階が阻害されると分かった。
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