翻訳の制御は、生命活動の根幹に関わる重要なプロセスである。以下の3つの翻訳発現制御について研究を行った。 1.miRNA による遺伝子発現制御 蛍光相関分光法を用いて 導入した蛍光標識miRNAの拡散を定量することにより、細胞内での miRNAの状態を明らかにした。細胞内への導入直後からガイド鎖の一部は遅い拡散成分として存在することから、細胞質内での速やかな複合体形成が示唆された。また、時間経過に伴う相互相関の減少が観測され、導入したpre-miRNAの二本鎖の解離の時定数(43.4分)を決定した。 2.翻訳アレストによる遺伝子発現制御 HaloTag-SecM-LacZのmRNAを翻訳させてアレスト複合体を作製した。HaloTagをStreptavidinを介してガラス基板上に固定し、mRNAをアンチセンスDNAの付いた磁気ビーズに結合させた。磁石を用いてビーズに負荷を印加し、磁気ビーズの回折パターンから3次元の位置を測定してリボソームの翻訳を可視化した。負荷を印加すると、翻訳アレストが解除され、下流遺伝子の翻訳が観察できた。加える負荷を強くすると翻訳アレスト寿命が短くなり、翻訳アレストが負荷依存的に解除されることを示した。 3.ストレス顆粒(SG)による遺伝子発現制御 SG の形成機構の解明と超微細構造の観察を行った。Cy5標識線形アンチセンスプローブによりCOS7細胞内のpoly(A)+ mRNAを蛍光標識し、SGsの超解像イメージングによる観察を行った。SGs内でmRNAは密度差をもって分布し、顆粒内部で高密度領域を形成していた。SGs内mRNA高密度領域の個数とサイズについて解析を行ったところ、mRNA高密度領域個数はSGsの大きさが大きくなるにつれて増加したが、高密度領域サイズはSGsの大きさの間に関わらず直径約70 nmだった。
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