研究課題
オートファジーの担い手であるオートファゴソームはAtg蛋白質群が集積したオートファゴソーム形成場(PAS)から作られるが、PASの実体と機能はこれまで不明であった。我々のグループはPASの核を作るAtg1複合体がin vitroにおいて液-液相分離を介して液滴を形成することを見出し、PASは膜のないオルガネラの一種であるという核心を得た。本研究では、in vitroで形成させた液滴状Atg1複合体の形状および性質を解析し、細胞におけるPASとの類似性を検証する。続いてPASの形成を制御しているリン酸化や、Atg1複合体の後にPASに集積する下流Atg因子群の添加を行い、液滴への影響を解析する。以上得られた“再構成PAS”について、その動的微細構造を明らかにする。最後に得られた知見を酵母を用いて検証することで、PASの実体を理解し、そのオートファジーにおける作動機構を明らかにする。本年度はin vitroで形成させたAtg1複合体液滴に対し、下流のAtg因子群の導入実験を行った。その結果、液滴内への移行効率にAtg因子間で顕著な差があることが明らかとなった。酵母ではPASは常に液胞膜上に形成される。液胞に見立てた巨大リポソームにAtg1複合体液滴を繋留させた、酵母におけるPASを模倣した系を用いて液滴の持つ物性を解析し、液体の性質を保持していることを明らかにした。PASは酵母で定義された構造体であり、哺乳類では小胞体上に多数のオートファゴソーム形成部位が構築されると報告されている。酵母Atg1複合体に対応する哺乳類ULK複合体に関して、Atg1複合体との詳細な配列比較を行うことで、ULK複合体もまたAtg1複合体と同様のメカニズムで液-液相分離する可能性があることが明らかとなった。哺乳類の場合、小胞体上で多数のULK複合体液滴が形成され、それがオートファゴソーム形成部位として働くモデルが考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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