研究課題
オリゴ糖転移酵素(OST)は小胞体においてタンパク質のN型糖鎖付加部位(Asn-Xaa-Ser/Thr; Xaa=Pro以外のアミノ酸)のAsnに糖鎖を転移する酵素複合体である。これまでの研究から、OSTはタンパク質への糖転移活性の他に、加水分解にっていわゆるタンパクや脂質に結合しない”遊離”N型糖鎖を生成することが明らかにされている(Harada, et al., JBC 2013)。この加水分解活性は出芽酵母のOSTに比べて哺乳動物のOSTではその活性が飛躍的に増強されており、その反応の生物学的重要性が注目されている。本研究では出芽酵母をモデル生物として用いて実験を行い、OSTの加水分解活性に対する小胞体関連分解に関するユビキチンリガーゼの影響を調べた。その結果、Hrd1単独の欠損株で有意に活性の上昇が観察され、更にHrd1 Doa10両方を欠損させることによって更にその加水分解量が増えることが判明し、実際にOSTの加水分解活性がユビキチンリガーゼの制御を受けていることが判明した。また、その加水分解活性は、OSTのドナー基質であるドリコール糖鎖の生合成に関わる様々なAlg変異体を用いるとHrd1 Doa10の2重欠損変異体においても抑制されており、OSTのタンパク質転移活性と同様、加水分解活性も生合成が完成したドリコール糖鎖(Dol-PP-Glc3Man9GlcNAc2)をより良い基質とすることが判明した。また、OSTの活性サブユニットであるSTT3の細胞質側のOSTのLysをArgに変異した変異体を作成したところ、いくつかの変異体で加水分解活性が上昇する変異体が確認された。
3: やや遅れている
現状本研究に従事するフルタイムの研究者、テクニカルスタッフがおらず、パートタイマーの方の協力で研究を推進しているため、通常よりは進みは遅い。今年度の10月より博士課程の学生が本プロジェクトの推進に参画する予定であり、更に研究のスピードが早まることが期待できる。
これまでの研究でユビキチンリガーゼがOSTの加水分解に影響を与えることが明らかになったので、今後はその効果が直接的なのか、また間接的な効果なのかを見極める必要がある。そのために、これまで研究室で確立されているOST酵素複合体にタグをつけて精製する技術を用いてOSTを精製し、それらのサブユニットにユビキチンが結合しているかどうかを観察する。もしユビキチンが結合している場合は、その結合位置を同定するとともに、Hrd1、Doa10またはHrd1 Doa10の2重変異体を用いてそのユビキチン付加に関わるユビキチンリガーゼを同定する。また、本加水分解活性の制御が哺乳動物でも保存されているかを確かめるために、Hrd1、およびDoa10の哺乳動物細胞オルソログを欠損した細胞株を作成する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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