研究課題
出芽酵母におけるOSTの遊離糖鎖生成活性について、膜タンパク質のうちnon-essentialな遺伝子欠損株約400株ほどについて遊離糖鎖の量、および構造に違いがでる変異体がないかどうかの検索を行った。その結果、先に見出していたユビキチンリガーゼ(Doa10, Hrd1)の他に、いくつか野生型と異なる表現型を示す変異体を確認した。現在これらの株について詳細な解析を行なっているところである。一方哺乳動物においては、肝細胞においてOSTの加水分解によって生じると考えられる小胞体遊離糖鎖は、分泌されて血清中のシアリル遊離糖鎖になる、と考えられている。これまで我々は血清遊離糖鎖の単離と構造解析を行なっていた(Seino, et al., Glycobiology 2016)が、その血清糖鎖について精製法を検討したところ、これまでの方法では検出できなかった中性糖鎖(オリゴ・高マンノース型:複合型)や、Gn1型糖鎖(還元末端がGlcNAc1個になっている糖鎖)、またミルクオリゴ糖に類似した糖鎖など、新規な糖鎖構造が複数見つかった。興味深いことに、Gn1型糖鎖の存在比については、動物種によって大きなばらつきが観測された。現在このGn1型糖鎖の生成機構について解析を進めている。特にミルクオリゴ糖型遊離糖鎖の生成にはOSTは関わっていないことが考えられ、血清遊離糖鎖の精製には複数のメカニズムが関与していることが明らかとなった。
3: やや遅れている
現状はフルタイムで本研究に従事する研究者、テクニカルスタッフはいない。学生が昨年10月より参画するはずであったが、コロナ禍の影響で来日が延期となり、現状いつ来日がかなうかわからない状況である。パートタイマーの協力を得て研究を進めているところである。
ユビキチンリガーゼに関する研究については、今後はOSTの精製などパートタイマーでは対応が難しい研究となるため、学生の博士課程の研究テーマにもなっているため、コロナ禍が鎮静化して来日をまっているところである。一方パートタイマーでできるような研究(変異株の解析、血清糖鎖の解析など)はできる範囲で進めているところである。
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