研究実績の概要 |
出芽酵母におけるOSTの遊離糖鎖生成活性について、小胞体関連分解(ERAD)に関わるユビキチンリガーゼ(Doa10、Hrd1)の欠損株において、その遊離糖鎖生成活性が促進されることが明らかとなった(Sheng-Tao Li et al., 論文投稿準備中)。また、それらの遊離糖鎖生成促進は、DTT処理など、タンパク質のフォールディング不全状態においてユビキチンリガーゼの依存性は解消されることから、出芽酵母におけるOSTの遊離糖鎖生成は小胞体ストレスなど、変性タンパク質が蓄積する条件で促進されることが明らかとなった。また、出芽酵母においてリン酸化遊離糖鎖の生成活性を生化学的に検出することに成功した。この活性はこれまで哺乳動物で見られていた活性と比較して、2価カチオンの要求性などの性質が大きく異なる酵素であることが示唆された(Sheng-Tao Li et al., 論文投稿準備中)。 哺乳動物のOST由来遊離糖鎖の分泌機構については、肝臓の初代培養を用いて実際に肝細胞がOST由来糖鎖の分泌に関わることを実験的に証明した(Chengcheng Huang, et al., 論文投稿準備中)。OST由来遊離糖鎖は、通常は細胞質に放出されて非リソソーム糖鎖代謝機構(Suzuki, T., Molecular Aspect of Medicine, 2016)によって分解、代謝されるが、肝細胞においてはその一部が分解をまぬがれ、分泌経路を通る過程でシアルさんを持つような複合型遊離糖鎖として分泌する、という経路が確立された。一方で、還元末端がGlcNAc1残基となった糖鎖や、ミルクオリゴ糖で見られるような新規の遊離糖鎖の分泌も見られることから、これまで考えられてきたより遊離糖鎖の分泌機構は複雑であることが明らかとなった。
|