研究課題
ヒストンH3の9番目(H3K9)のメチル化は、転写抑制のエピゲノムとして種を超えて保存されている。本研究課題では、このH3K9メチル化マークにより如何に転写抑制状態が確立するのか、その共通あるいは特有の原理を明らかにすることを目標としている。そのために、3つの研究を計画した。2018年度は、サブテーマ2,3に関して以下の研究の進展があった。サブテーマ2:「Dnmt1,3a,3b TKO ES細胞を用いて、G9a/GLP複合体によって誘導されている転写抑制に寄与する遺伝子の網羅的なスクリーニングと同定された遺伝子の機能解析」Dnmt1, 3a and 3b条件的トリプルノックアウト(Dnmt1/3a/3b condTKO) ES細胞を用いて、G9aにより転写が抑制されている遺伝子Mage-a領域にGFPをノックインし、さらに恒常的にhCas9を発現する細胞を樹立した。次に、この細胞でG9aをG9a gRNAレンチウイルスでKOあるいはDnmt1/3a/3b TKO+G9a阻害剤UNC0642の処理により、GFPの脱抑制が誘導されることを確認した。よって、網羅的なCRISPR-Cas9 KOスクリーニング系が完成した。サブテーマ3:「メスのEpiSCを用いてのXCIの確立・維持に寄与する遺伝子の網羅的なスクリーニングと同定された遺伝子の機能解析」不活性化されているX染色体にGFPが挿入されているメスのEpiSC株に、hCas9を発現させた細胞を樹立した。この細胞でDnmt1 gRNAによるDnmt1 KOを行うと、少数ながらGFPが発現してくる細胞を確認した。よってこちらも、X染色体の不活性化に関わる因子の網羅的なCRISPR-Cas9 KOスクリーニング系がとりあえず構築できたと判断した。
2: おおむね順調に進展している
サブテーマ2,3に関しては予定通りの研究の進展があった。
今後は、それぞれのサブテーマに関して以下の研究を進めるサブテーマ1:「出芽酵母でのH3K9メチル化による転写抑制系の確立とH3K9メチル化読み取り分子の転写抑制における役割の検討」2019年度に出芽酵母で転写抑制の評価系を確立した。さらに、H3K9メチル化誘導が確認できつつあるので、globalおよび特定部位へのH3K9メチル化の誘導とH3K9メチル化誘導における転写への影響を解析するサブテーマ2:2019年度に網羅的Cas9/gRNAノックアウトスクリーニングを行い、G9a/GLP複合体による転写抑制で働くことが知られている遺伝子並びに多くの新規遺伝子を同定した。そこで、同定された新規因子の機能解析を進める、特にH3K9メチル化の下流で機能する因子の機能解析を進めるサブテーマ3:2019年度中にXCIの確立・維持に寄与する遺伝子の網羅的Cas9/gRNAノックアウトスクリーニング系をほぼ構築した。順次スクリーニングを開始し、新規の候補遺伝子が同定されたら、その遺伝子の機能解析を始める
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件)
Structure
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