研究実績の概要 |
ヒストンH3の9番目(H3K9)のメチル化は、転写抑制のエピゲノムとして種を超えて保存されている。本研究課題では、このH3K9メチル化マークにより如何に転写抑制状態が確立するのか、その共通あるいは特有の原理を明らかにすることを目標としている。そのために、以下の3つのサブテーマ(ST)を計画した。ST1:「出芽酵母でのH3K9メチル化による転写抑制系の確立とH3K9メチル化読み取り分子の転写抑制における役割の検討」、ST2:「Dnmt1,3a,3b TKO ES細胞を用いて、G9a/GLP複合体によって誘導されている転写抑制に寄与する遺伝子の網羅的なスクリーニングと同定された遺伝子の機能解析」、ST3:「メスのEpiSCを用いてのXCIの確立・維持に寄与する遺伝子の網羅的なスクリーニングと同定された遺伝子の機能解析」。2020年度は、それぞれのSTに関して以下の研究の進展があった。 ST1:哺乳類のH3K9メチル化酵素、その制御因子、H3K9メチル化読み取り分子HP1を出芽酵母で発現させるベクターを構築し、一過的な発現、発現による細胞毒性がないことを確認した。まず、H3K9メチル化酵素を恒常的に発現させる株を樹立し、G9a、GLP、SUV39H1、SETDB1を発現させるとH3K9me2,3を誘導できることを確認した。 ST2:G9aにより転写が抑制されている遺伝子領域にGFPを導入したマウスES細胞を用いて、GFPの脱抑制を指標に、G9aによる転写抑制に寄与する因子の網羅的CRISPR-Cas9 KOスクリーニングを行い、既知および新規候補因子を同定した。現在、それらの因子の機能解析を進めている。ST3:メスのEpiSC株を用いたCRISPR-Cas9 KOスクリーニング系を確立し、網羅的検討を進めたが、今回は新規因子の同定にまでは至らなかったので、検出系の再検討を進めている。
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