本年度は以下の成果が得られた。 1.ストレス下におけるプロテアソーム分子ネットワークの変動(佐伯):昨年度までに見出したATPレベル低下時に形成するプロテアソーム液滴に焦点を当てた解析を実施した。タンデム質量タグを用いた網羅的なプロテオーム解析、経時的なユビキチン化プロテオーム解析により、ATPストレス時には広範なATP結合タンパク質がユビキチン化されること、RAD23BやUBQLN2によって液滴に集積すること、一部のタンパク質はプロテアソームにより分解されるが、多くは分解されず貯蔵されることを見出した。また、本プロテアソーム液滴は可逆的な構造体であり、ATPレベルの回復時に解消するが、その解消にはp97活性と基質タンパク質の脱ユビキチン化が必要であることを見出した。よって、ATPレベル低下時に生じるプロテアソーム液滴はストレス顆粒と類似した構造体であることが明らかとなった(論文準備中)。 2.新規シャトル分子の探索(佐伯):プロテアソームおよびユビキチン結合するシャトル分子としてZFANDタンパク質ファミリーを見出したが、本年度は、網羅的なインタラクトーム解析を実施し、RAD23ファミリー等と比較したところ、ZFANDファミリーは既知のシャトル分子とは相互作用分子群が異なること、ファミリー内でいくつかのクラスに分類できることが明らかとなった。 3.ES細胞特異的プロテアソーム結合分子の機能解析(新井・佐伯):これまで分化前後にプロテアソームのアクセサリー分子が増加あるいは減少することを見出したが、ES細胞の増殖能や分化に明確に影響する分子は同定されなかった。
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