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2020 年度 実績報告書

先端技術の融合で解き明かす地下生態系のブラックボックス

研究課題

研究課題/領域番号 18H04009
研究機関京都大学

研究代表者

東樹 宏和  京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (60585024)

研究分担者 中森 泰三  横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (50443081)
馬場 友希  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (70629055)
木庭 啓介  京都大学, 生態学研究センター, 教授 (90311745)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード食物網 / 相互作用ネットワーク / 地下生態系
研究実績の概要

2020年度は、2018年4月から11月にかけて採集された48種2274個体のクモを対象とした分析を精緻化した。全個体について、表面洗浄によるDNAコンタミネーション対策を施した上で、種同定や生育段階の記録、実体顕微鏡画像の記録等を行っており、群集生態学の歴史においても稀有なスケールでのサンプルセットとなっている。この個々のクモ個体について、昨年度までに最適化したDNAメタバーコーディングの手法を用い、8-9割のサンプルで餌と推定される何らかのHexapodaのDNA配列が得られるレベルにまで技術が向上している。
この膨大なデータを用いて、各月のpredator-preyネットワークの構造を推定したところ、食う-食われる関係が密に結ばれているネットワークのモジュール構造が大きく季節変動することが明らかになった。また、ネットワーク全体での種間関係の特異性を表すネットワーク指標の季節変動を分析したところ、predator-prey相互作用における群集全体での特異性が季節によって大きく変動していることが明らかになった。
さらに、2020年度は、各種のクモ個体の安定同位体比を分析した。脂肪酸の安定同位体比に着目することにより、餌内容のレパートリーについて、種内の個体間や種間での変異が認められた。非常に実験ステップの多い分析であるため、膨大な個体数をハイ・スループットに分析するためにさらなる技術革新が必要ではあるが、DNAメタバーコーディングと安定同位体分析の融合によって地下から地上にかけての生物間相互作用ネットワークの全体像を解明し得ることが明らかになりつつある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本プロジェクトでは、従来の研究手法では到底解明しきれない地上-地下生態系の境界域における生物間相互作用ネットワークをハイ・スループットに分析する技術を開発している。極めて挑戦的な試みである一方、もし実現できれば、野外生態系における種間相互作用の全体像を解明するとともに、その動態をモニタリングする上での極めて重要な土台となることが期待される。
これまでの研究開発によって、50種近い捕食者と1000以上の被食者operational taxonomic unitsの間で繰り広げられるpredator-prey相互作用の全体像を解明することに成功し、さらに、その季節変動を詳細に追跡することも可能となった。今回解明された食物網構造に関するデータは、群集生態学の歴史においても類を見ない規模のものである。
本成果について、2020年度に各種の講演を行ったが、その反響は非常に大きかった。また、この研究プロジェクトに取り組む大学院生が、日本生態学会において最優秀ポスター賞、応用動物昆虫学会においてもポスター賞を受賞し、研究内容に関する問い合わせが数多く寄せられている。

今後の研究の推進方策

上記のように、すでに詳細な生物間相互作用ネットワークの動態を解明する手法の開発に成功しているため、今後はその成果の論文化を行っていく。その上で、データの分析をさらに精緻化させていく。ネットワーク全体での構造の変化を評価する統計的・ネットワーク科学的な手法を開発するとともに、ネットワーク内のキーストーン種をあぶり出す分析法も開発する。
さらに、DNAメタバーコーディングによる餌内容の推定結果を裏付けるため、脂肪酸の安定同位体分析も進める。腐食連鎖と生食連鎖との間で、安定同位体比に違いがあることが推測される。また、腐朽菌と菌根菌のそれぞれに由来するエネルギーチャンネルの間にも、安定同位体比に差があることが推測される。このことから、もし詳細な安定同位体比の分析が可能となることで、複数のエネルギーチャンネル由来の食物網がどのように地下から地上にかけて融合されていくのかを解明できると期待される。
加えて、クモやトビムシ類のDNAバーコーディングを実施し、リファレンスデータベースの拡充を行っていく。多くの情報が公共データベースに登録されればされるほど、食物網の構造推定の精度が向上する。世界共通の研究プラットフォームを充実させるためにも、こうした公共性の高い活動を推進する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [学会発表] 農業生態系の総合的管理による持続可能な食糧生産に向けて2021

    • 著者名/発表者名
      東樹宏和
    • 学会等名
      農林水産省 講演
    • 招待講演
  • [学会発表] 食物網、共生ネットワーク、そして生態系の再生へ2021

    • 著者名/発表者名
      東樹宏和
    • 学会等名
      第68回日本生態学会シンポジウム
  • [学会発表] 節足動物群集のDNAメタバーコーディングから被食ー捕食ネットワークの季節動態へ2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木紗也華・馬場友稀・東樹宏和
    • 学会等名
      第68回日本生態学会ポスター発表
  • [学会発表] DNAメタバーコーディングを用いた草原性クモ群集の被食ー捕食ネットワークの季節変動と種特異性の評価2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木紗也華・馬場友稀・東樹宏和
    • 学会等名
      第65回日本応用動物昆虫学会 ポスター発表
  • [学会発表] Does informatics of microbiomes revolutionize agriculture?2020

    • 著者名/発表者名
      Hirokazu Toju
    • 学会等名
      Keynote lecture. The Joint Meeting of The eDNA Society & The Society of Population Ecology
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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