研究実績の概要 |
(1)オオオサムシ亜属体サイズ変異の遺伝的基盤:九州産ヒメオサムシ5集団の体サイズ変異について全ゲノムリシーケンスデータを用い、デモグラフィー推定と、集団間のゲノム配列変異(とくに体サイズのQTL領域)を解析した。 (2)オオオサムシ亜属交尾器形態種間差の遺伝的基盤:交尾器形態差が大きいイワワキ・アオオサムシ種群の西の3種(イワワキ、マヤサン、ドウキョウ)のグループと東の4種(アオ,シズオカ,カケガワ,ミカワ)のグループについて、終齢幼虫・蛹の交尾器発生部分のmRNAを抽出してRNAseqを行い遺伝子発現解析を行なった。種間・性間の遺伝子発現プロファイルの比較から交尾器サイズの進化と性間の共進化に関わる遺伝子群と発現プロファイルを特定した。また交尾器の巨大化に関係する雌雄で同調した遺伝子発現について明らかにした。 (3)日本産フトミミズ科の系統解析:日本各地で収集したフトミミズ科アズマフトミミズ属のサンプルをDNAバーコードで分類し、代表サンプル約200個体についてショットガンシーケンスを行い、全ミトゲノム・核28S-18SrRNA領域の配列をアセンブルした。これにデータベースから取得した東アジアの大陸産のデータを加えて分子系統解析を行い、日本産アズマフトミミズ属の起源、分岐年代、主要形態形質(腸盲嚢、受精嚢孔)の進化傾向を明らかにした。 (4)日本におけるミミズ群集の種多様性:日本のミミズ群集の種多様性の緯度勾配について、北海道から九州までの131地点から採集された4075個体のデータを分析した。ミミズの種はCOI,ITS, 28SrRNAによるDNAバーコード解析で分類した。種多様性には緯度勾配が認められ、積雪が少ないところほどα多様性が高く、地域の気温・降水量・環境の不連続性の増加とともにβ多様性が増加することが分かった。
|