現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
齧歯類(マウス)の実験系を霊長類(マーモセット)に適応するには、数多くのハードルがある。まず、齧歯類と同じ脳内機構で生体リズムが生み出されるのであろうか?そのため、骨格となる時計遺伝子(Per1, Per2, Per3, Cry1, Cry2, Bmal1, Dbp, E4bp4)の構造を検索したところ、コーディングの部位のみならず、それらの制御領域も、強く保存されていることが明らかとなった。また、視交叉上核SCNの機能も、両者ともその発振の中枢であることがわかった。さらに、マーモセット飼育可能な恒常環境室を作成し、自律発振時間機構があることを、行動リズム・体温リズム測定により明らかにした。光による位相依存的位相変動も明らかとなった。また、マウスのSCNに発現する受容体のうちいくつかが、マーモセットにも発現することが明らかとなった。これらの成果により、霊長類の生体リズムを物質レベルで探求する手段ができ、後の研究展開の大きな基盤となった。また、RNAレベルの制御や、時差の分子機構のマウスでの解明は、生体リズム障害がヒトでの大きな臨床課題となっている現代、霊長類での研究展開に大きな示唆を与えるものと言える。
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