研究課題/領域番号 |
18H04016
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八木 健 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10241241)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロトカドヘリン / 神経細胞 / 神経回路 / シナプス / 脳幹網様体 |
研究実績の概要 |
本研究では、cPcdh遺伝子群の神経細胞におけるランダム発現と回路形成を捉え、操作することにより、セルアセンブリ形成のメカニズムを明らかにすることを目標に研究を行っている。 1)cPcdh遺伝子発現を可視化したノックインマウスの解析。cPcdh遺伝子のランダム発現を可視化するために、cPcdh遺伝子に標識マーカー遺伝子をノックインしたマウスの作製を行た。β3-Tomatoノックインマウスを用いて、海馬体で活動している神経細胞のセルアセンブリをc-fosの発現により捉え、β3発現細胞とセルアセンブリの比較を行った。その結果、新規環境におけるc-fos発現細胞とβ3発現細胞との間に強い相関は観察できなかった。今後は、学習・記憶依存的なセルアセンブリとβ3発現細胞との関連性を明らかにする予定である。 2)cPcdhβ欠損マウスを用いた学習・記憶依存的なセルアセンブリの解析を行った。その結果、cPcdhβ欠損マウスでは、学習・記憶依存的なセルアセンブリが野生型マウスに比べて大きくなっていた。また、cPcdhβ欠損マウスでの学習能力についての異常も認められた。 3)iPS細胞を用いたキメラマウス作製により、マウス大脳皮質における細胞系譜依存的・神経回路依存的なcPcdh遺伝子発現をシングル細胞レベルで解析を行った。その結果、同一細胞系譜の神経細胞ではcPcdh遺伝子発現パターンが有意に類似していることが明らかになった。 4)これまで、cPcdhタンパク質はシナプス形成に関わることが示唆されてきたが、そのシナプス膜での局在は明らかになっていなかった。本年度、フリーズフラクチャー法を用いて海馬シナプス膜におけるcPcdhタンパク質の局在を確認することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
cPcdh遺伝子発現を可視化したノックインマウスの作製が進んでおり、ノックインマウスを用いたセルアセンブリの解析が順調に進められている。また、cPcdhβ欠損マウスでは、学習・記憶依存的なセルアセンブリの異常が認められ、学習能力についての異常も認められた。これらの結果は、Pcdh遺伝子群がセルアセンブリ形成に関わることを世界で初めて示した結果である。また、同一細胞系譜の神経細胞ではcPcdh遺伝子発現パターンが有意に類似していること、海馬シナプス膜におけるcPcdhタンパク質の局在を確認することに世界で初めて成功した。
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今後の研究の推進方策 |
cPcdhβだけでなく、cPcdhαやcPcdhγの遺伝子発現を可視化したノックインマウスの作製を行うとともに、CreERを用いたノックインマウス作製によりチャネルロドプシンなどを用いた光遺伝学的手法により、cPcdh遺伝子発現細胞を人工的に活性化させる実験を行いたい。これにより、機能的なセルアセンブリとcPcdh遺伝子発現細胞のもつ機能との関連性を明らかにすることができる。また、cPcdhα遺伝子減少マウスでは、短期記憶・ワーキングメモリーの異常が明らかになっている。このマウスにおける機能的セルアセンブリを解析することにより、cPcdhα遺伝子とセルアセンブリとの関連性の解析を進めてゆく予定である。
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