研究課題/領域番号 |
18H04018
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 直貴 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (90312123)
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研究分担者 |
竹中 聡 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00588379)
岡田 潔 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授 (40576279)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞療法 / 腫瘍免疫 / キメラ抗原受容体 / 肉腫 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
血管内皮細胞増殖因子受容体-2 (VEGFR2) を標的とするキメラ抗原受容体発現T (CAR-T) 細胞療法の臨床実用化の可能性を検討するべく、患者から摘出した肉腫組織におけるVEGFR2発現を解析するとともに、安全性と有効性に対するin vitro評価系の構築に取り組んだ。多くの肉腫組織標本においてCD31陽性の腫瘍血管内皮細胞にVEGFR2が高発現しており、血管の浸潤が多い肉腫症例が本療法の対象になると思われた。一方、腫瘍周辺の正常組織血管ではVEGFR2発現はほとんど検出されず、本療法が腫瘍血管を特異的に傷害する可能性が示唆された。また、mRNAエレクトロポレーション (EP) 法により作製する臨床研究用ヒトCAR-T細胞医薬の規格化に着手した。作製したヒトCAR-T細胞は、mRNA-EPに伴う明らかな傷害を認めず、いずれのCARコンストラクトもEP処置後およそ24時間でCAR発現強度のピークを迎え96時間後にはT細胞膜上から消失した。mRNA-EPから24時間培養した各CAR-T細胞はヒトVEGFR2発現細胞を特異的に傷害したが、傷害活性にはCARコンストラクトの違いによって大きな差異を認め、CD28由来ヒンジ領域・膜貫通領域・シグナル伝達領域を有するCARが本戦略において最も優れた治療効果を期待させるCARコンストラクトであると選定した。mRNA-EPにより作製したヒトCAR-T細胞は凍結輸送によって生存率・増殖活性・細胞傷害活性が低下することが判明し、冷蔵輸送に切り替えることによってこれらの機能低下を抑えることが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究実施計画のうち、「臨床用CARコンストラクトの選定」「ヒト肉腫サンプルを用いた安全性評価法の確立」「CAR-T細胞の腫瘍内集積解析法の構築」については全て達成することができた。「非臨床試験用CAR-T細胞の製造法の確立」については、凍結輸送したCAR-T細胞の生存率および機能に予期しなかった大幅な低下が認められたため繰越申請によるCAR-T細胞輸送条件の再検討を要したが、冷蔵輸送に切り替えることで問題を解決することができた。CAR-T細胞試験製造 (輸送法を含む) に時間を要したため「PMDA RS総合相談」に遅れが生じているため、今後速やかに指導および助言を求める相談を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
CAR-T細胞と同一エピトープを認識する抗VEGFR2抗体を作製し、ヒト肉腫組織切片におけるVEGFR2染色を実施することで、肉腫の中でも本CAR-T細胞療法の有効性が期待できる症例を特定する。あわせて安全性を見極める評価法として、作製した抗VEGFR2抗体の正常組織切片に対する結合性についても検討する。また、非臨床試験用CAR-T細胞製造に係る標準操作手順書作成に向けて、ヒトCAR-T細胞製造法の最適化を図るとともに、作製したCAR-T細胞について従来の基礎研究で調製してきたCAR-T細胞が示す機能・表現型等との同等性確認を行う。さらに、スケジュールに遅れが生じている「非臨床試験開始に向けたPMDA RS総合相談・戦略相談」を必要に応じて実施する。
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