研究課題/領域番号 |
18H04022
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 茂穂 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20344070)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 変性タンパク質 / ユビキチン / ダイニン / 神経変性疾患 / siRNAスクリーニング |
研究実績の概要 |
下記1-3の項目について研究を行った。 1. DYNC1I1によるアグリソーム形成機構の解明とその病態生理的意義の解明:DYNC1I1はダイニン複合体構成因子であり、ユビキチン結合能を有さないことから、ユビキチン化タンパク質とDYNC1I1の間に介在する分子の存在が強く示唆される。ヒト培養細胞を用いたゲノムワイドsiRNAスクリーニングを実施した結果、アグリソーム形成不全をきたす分子を複数取得した。また介在因子を生化学的に取得するための実験系を構築した。 2.HUIPによるユビキチン化タンパク質の核外排出機構とその病態生理的意義の解明:我々が同定した、ユビキチン化タンパク質の核外排出に関与する新規分子HUIPの機能解析を行い、UBAドメインを介してユビキチン鎖を捕捉すること、Hsp70とほぼ1:1の量比で会合することを明らかにした(Mol Cell Biol, 2018)。ショウジョウバエを用いた神経変性モデルにおいて、HUIPの欠損が神経変性を増悪化させることが示唆された。HUIPの生理機能をさらに探索するため、HUIP欠損マウスの作成に着手した。 3. 構造異常タンパク質の細胞内動態の制御機構とその病態生理的役割の包括的理解:構造異常タンパク質の細胞内動態を制御する新しい因子を網羅的に探索するために、SOD1(G93R)、変異タウ、変異αシヌクレインを恒常的に発現する細胞を樹立し、各タンパク質の細胞内局在、凝集の大きさと局在を指標としたゲノムワイドsiRNAスクリーニングを実施した。その結果、複数の候補因子の同定に至った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. siRNAスクリーニングを順調に完了し、有力な候補分子を複数取得することが出来た。 2.ショウジョウバエ個体を用いたHUIP機能の評価を行い、論文として公表することが出来た。 3.異常タンパク質を発現する様々な細胞の樹立およびスクリーニング系の樹立が極めて順調に完了し、すでにsiRNAスクリーニングを完了することが出来た。 以上の理由から、次年度に向けて機能解析に移行すべき複数の有力候補分子を同定でき、速やかに機能解析に進むことが出来る態勢となったのは、当初の研究計画を超える早さであった。今後3年間でじっくり機能解析を実施可能であり、非常に幸先の良い一年であった。
|
今後の研究の推進方策 |
1.ダイニン関連因子による異常タンパク質凝集形成機構①アグレソーム形成と関連が示されたダイニンサブユニットとユビキチンとを繋ぐ分子をsiRNAスクリーニングヒットおよび生化学的解析から明らかにし、アグリソーム形成の分子機構における役割を明らかにする。②アグリソーム形成不全による細胞ストレスと病態生理的意義の解明:細胞内に異常タンパク質が出現すると細胞にどのようなストレスがかかるのか一様な答えはなく、いまだに「タンパク質の恒常性破綻によるストレス」の本体が明瞭ではない。様々な異常タンパク質を発現させた細胞株やスクリーニングヒット分子の解析から、本体に迫る。 2.HUIPによるユビキチン化タンパク質の核外排出機構とその病態生理的意義の解明:HUIP欠損マウスを作成し、その病態生理的意義を明らかにする。また、なぜ核内ユビキチン化タンパク質が細胞質へ運び出される必要があるのか、細胞レベル・個体レベルの解析を行う。個体レベルでの解析のために、HUIP欠損マウス・線虫を作製し、神経変性モデルと交配し、ユビキチン化変性タンパク質の核外排出の病態生理的意義について明らかにする。 3. 構造異常タンパク質の細胞内動態の制御機構とその病態生理的役割の包括的理解:SOD1(G93R)、変異タウ、変異αシヌクレインを恒常的に発現する細胞を樹立済みであり、各タンパク質の細胞内局在、凝集の大きさと局在を指標としたゲノムワイドsiRNAスクリーニングを実施した結果得られた複数の候補因子について、各因子の機能解析を継続する。
|