下記1-3の項目について研究を行った。 1. DYNC1I1によるアグリソーム形成機構の解明とその病態生理的意義の解明: DYNC1I1はダイニン複合体構成因子であり、ユビキチン結合能を有さないことから、 ユビキチン化タンパク質とDYNC1I1の間に介在する分子の存在が強く示唆された。DYNC1I1と共沈降する因子を質量分析により網羅的に探索した結果、ユビキチン結合能を有し、ノックダウンによりアグリソーム形成異常を呈する因子を2つ同定した。これらの因子はP97/VCPやkinesinとの相互作用することを明らかにし、作用機序の一端を解明した。 2.HUIPによるユビキチン化タンパク質の核外排出機構とその病態生理的意義の解明:我々が同定した、ユビキチン化タンパク質の核外排出に関与する新規分子 HUIP欠損マウスを作出した。同マウスにおいても各種臓器においてユビキチン化タンパク質の核内蓄積を観察出来たので、蓄積タンパク質のユビキトーム解析を行い、基質タンパク質の同定を目指した。その結果、特に新規に合成される核内タンパク質が主要な基質であることを明らかにした。 3. 構造異常タンパク質の細胞内動態の制御機構とその病態生理的役割の包括的理解:構造異常タンパク質の細胞内動態を制御する新しい因子を網羅的に探索する ために、SOD1(G93R)、変異タウ、変異αシヌクレインを恒常的に発現する細胞を樹立し、各タンパク質の細胞内局在、凝集の大きさと局在を指標としたゲノムワイドsiRNAおよびCRISPR KOスクリーニングを実施し、複数の候補因子を得た。そのうちの1つが、ESCRT関連因子であり、ESCRT経路を利用した異常タンパク質のクリアランス機構を明らかにし、さらに遺伝性痙性麻痺の原因遺伝子変異により同経路が不全になることを明らかにした。
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