• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実績報告書

制御性T細胞による免疫制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18H04025
研究機関東京大学

研究代表者

堀 昌平  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50392113)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード制御性T細胞 / 自己免疫疾患 / 免疫寛容 / 遺伝子発現制御
研究実績の概要

本研究で我々は、制御性T細胞(Treg)の細胞外環境変化に対する系列安定性と適応性を制御する分子機構の解明を目指している。今年度は以下の結果を得た。
安定性に関しては、Foxp3依存的および非依存的なTreg系列決定機構について研究を進めた。前者については、Foxp3と協調して内在性Foxp3発現誘導とTSDR脱メチル化を促進する転写因子についてT細胞特異的遺伝子欠損マウスを作製し解析を進めた。その結果、Foxp3+ T細胞の数は大きな影響を受けないものの、Foxp3+ T細胞におけるTSDR脱メチル化の程度がやや低下していたことから、この因子がTSDR脱メチル化に寄与していることが示唆された。後者については、TCR依存的機構について研究を進め、強く持続的なTCRシグナルが誘導されたFoxp3+ T細胞のTSDR脱メチル化ととともに頑健な抑制活性を誘導することを見いだした。一方で、Foxp3発現に対して促進的に働くmTOR阻害はTSDR脱メチル化に対して抑制的に働く一方、Foxp3非依存的に抑制活性を誘導していることを見いだした。
適応性に関しては、これまでにFoxp3がBATFと機能的に協調することでTCRシグナル依存的なTregのエフェクター分化と組織集積を促進することを明らかにしてきた。今年度、この現象をmimicするin vitro系を構築し、Foxp3とBATFが協調的にTCRシグナル依存的な活性化細胞死を抑制しエフェクター型Treg特有の遺伝子発現を誘導することによりTregのエフェクター分化と数を維持していることを明らかにした。また、Foxp3<A384T>変異マウスの解析も進め、変異型Foxp3によるBATF発現抑制がエフェクター型Treg異常と組織炎症に寄与しているものの、BATF発現抑制のみによっては完全には説明できないことを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

安定性:Foxp3依存的経路については、年度当初予定していた通り、着目している転写因子のT細胞特異的、さらにはTreg特異的遺伝子欠損マウスを作製・解析して機能解析を進めることができ、生体内におけるTreg分化過程でTSDR脱メチル化に寄与することを明らかにした。Foxp3非依存的経路についても、年度当初予定していたとおりTCR/mTORシグナルがどのようにTreg系列への運命決定を制御するのかについて研究を進め、強く持続的なTCRシグナルがTSDR脱メチル化と同時に抑制機能も誘導することを明らかにできた。一方、mTOR阻害はFoxp3発現の安定性については阻害的に働くのに対し、抑制機能についてはFoxp3非依存的に促進するという新しい知見を得た。
適応性:当初の計画通りFoxp3とBATFが協調的にTCRシグナル依存的なTregのエフェクター分化と組織集積を促進するメカニズムについて解析を進め、この生体内における現象をmimicするin vitro系を構築してメカニズムの一端を明らかにできた。今後、この系を利用してFoxp3とBATFにより協調的に制御される標的遺伝子を同定することで分子機構に迫ることができるようになるため、大きな進捗と考えている。また、Foxp3<A384T>変異マウスにおけるTregのエフェクター分化と組織集積障害機構についても解析を進め、従来考えていたBATF発現抑制の寄与を個体レベルで明らかにできた。一方で、BATF発現抑制だけでは説明できないことも明らかになり、Tregのエフェクター分化と組織集積を制御する新しい機構が存在することが示唆された。

今後の研究の推進方策

安定性:Foxp3依存的経路については、着目している転写因子の機能解析をさらに進める。また、この転写因子とFoxp3がどのようにTSDRの脱メチル化を促進するのか、そのメカニズムに迫るために、これら転写因子の構造活性相関解析を進める。Foxp3非依存的経路については、強く持続的なTCRシグナルがどのようなメカニズムでTSDR脱メチル化を促進するのかを明らかにするために、CRISPRスクリーニングの系を立ち上げて、重要な分子機構を明らかにするよていである。
適応性:今年度樹立したin vitro系を利用し、Foxp3とBATF両者によって発現が制御される標的遺伝子を同定し、その機能解析を進める。また、Foxp3<A384T>変異マウスにおける、BATF抑制非依存的なTreg障害のメカニズムについても解析を進める。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Regulatory T-cells regulate neonatal heart regeneration by potentiating cardiomyocyte proliferation in a paracrine manner2019

    • 著者名/発表者名
      Li J, Yang KY, Tam RCY, Chan VW, Lan HY, Hori S, Zhou B, Lui KO
    • 雑誌名

      Theranostics

      巻: 9 ページ: 4324-4341

    • DOI

      10.7150/thno.32734. eCollection 2019

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Dynamic Imprinting of the Treg Cell-Specific Epigenetic Signature in Developing Thymic Regulatory T Cells2019

    • 著者名/発表者名
      Herppich S, Toker A, Pietzsch B, Kitagawa Y, Ohkura N, Miyao T, Floess S, Hori S, Sakaguchi S, Huehn J
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 10 ページ: 2382

    • DOI

      10.3389/fimmu.2019.02382. eCollection 2019

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Defective induction of the proteasome associated with T-cell receptor signaling underlies T-cell senescence2019

    • 著者名/発表者名
      Arata Y, Watanabe A, Motosugi R, Murakami R, Goto T, Hori S, Hirayama S, Hamazaki J, Murata S
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 24 ページ: 801-813

    • DOI

      10.1111/gtc.12728

    • 査読あり
  • [学会発表] 転写因子Foxp3はTCRシグナル依存的な制御性T細胞のエフェクター分化・非リンパ組織集積を促進する2020

    • 著者名/発表者名
      村上龍一、堀昌平
    • 学会等名
      第3回新学術領域研究「ネオ・セルフ」若手の回
  • [学会発表] 組織特異的な自己免疫疾患制御におけるTregのTCRレパトアの役割の解明2020

    • 著者名/発表者名
      星谷圭徹、村上龍一、堀昌平
    • 学会等名
      第3回新学術領域研究「ネオ・セルフ」若手の回
  • [学会発表] TCRシグナルによる制御性T細胞のエピゲノム形成機構の解明2020

    • 著者名/発表者名
      木下誠秀、中島啓、早津徳人、大西玲子、堀昌平
    • 学会等名
      第3回新学術領域研究「ネオ・セルフ」若手の回
  • [学会発表] Molecular control of the differentiation and accumulation of tissue regulatory T cells2020

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori and Ryuichi Murakami
    • 学会等名
      AMED-CREST恒常性領域&適応・修復領域 合同国際シンポジウム
  • [学会発表] Molecular control of effector differentiation and tissue adaptation of Treg cells2019

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      17th International Congress of Immunology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Coupling the genetic and phenotypic heterogeneity in the adaptive immune system: a role for regulatory T cells2019

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      Interface between Immunology & Quantitative Biology
    • 招待講演
  • [学会発表] T cell-dependent regulation of immunological tolerance and tissue homeostasis2019

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      48th Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology
    • 招待講演
  • [学会発表] 制御性T細胞のエフェクター分化と組織集積の分子的制御2019

    • 著者名/発表者名
      堀昌平
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 制御性T細胞と免疫寛容2019

    • 著者名/発表者名
      堀昌平
    • 学会等名
      第6回総合アレルギー講習会
    • 招待講演
  • [学会発表] TCRシグナルによる制御性T細胞のエピゲノム形成機構の解明2019

    • 著者名/発表者名
      木下誠秀、中島啓、早津徳人、大西玲子、堀昌平
    • 学会等名
      第19回東京大学生命科学シンポジウム
  • [学会発表] 制御性T細胞のエピゲノム形成における転写因子GATA1の役割2019

    • 著者名/発表者名
      松井文、清水沙耶、船津翔太郎、川上英良、村上龍一、中島啓、堀昌平
    • 学会等名
      第19回東京大学生命科学シンポジウム
  • [学会発表] 組織選択的な自己免疫疾患制御におけるTCRレパトアの役割の解明2019

    • 著者名/発表者名
      星谷圭徹、村上龍一、堀昌平
    • 学会等名
      第19回東京大学生命科学シンポジウム
  • [学会発表] TCRシグナルによる制御性T細胞のエピゲノム形成機構の解明2019

    • 著者名/発表者名
      木下誠秀、中島啓、早津徳人、大西玲子、堀昌平
    • 学会等名
      第29回Kyoto T Cell Conference
  • [学会発表] TCRシグナルによる制御性T細胞のエピゲノム形成機構の解明2019

    • 著者名/発表者名
      木下誠秀、中島啓、早津徳人、大西玲子、堀昌平
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] 制御性T細胞のエピゲノム形成における転写因子GATA1の役割2019

    • 著者名/発表者名
      松井文、清水沙耶、船津翔太郎、川上英良、村上龍一、中島啓、堀昌平
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] 組織選択的な自己免疫疾患制御における制御性T細胞のTCRレパトアの役割2019

    • 著者名/発表者名
      星谷圭徹、村上龍一、堀昌平
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] The transcription factor BATF functionally to control effector program in regulatory T cells2019

    • 著者名/発表者名
      Ryuichi Murakami, Wataru Ise, Tomohiro Kurosaki, Shohei Hori
    • 学会等名
      48th Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi