研究実績の概要 |
本研究では、リプログラミング技術をエピゲノム改変のツールとして利用することで、発がんにおけるエピゲノム制御の意義を「細胞脱分化」「がんの起源細胞」「細胞種特異性」に着目し解析を行なった。得られた知見を応用して「がん細胞の運命制御の可能性を提示」し、エピゲノム制御による独創的ながん治療法の開発を目指した。研究目標[1] 「発がんにおける細胞脱分化に関連したエピゲノム制御機構の役割を明らかにする」に関しては、Kras膵がんモデルを用いてKras遺伝子変異に加えて一過性の細胞脱分化が膵がん発生に十分であることを示した(Nature Communications, 2018)。研究目標[2] 「がん細胞由来iPS細胞を応用して、がん細胞の起始細胞を同定する」、研究目標[3] 「発がんの細胞種特異性の分子基盤を明らかにする」については、明細胞肉腫がTppp3を発現する末梢神経の細胞から発生することを同定し、細胞老化に対する応答が発がんの細胞種特異性を決定する因子となっていることを明らかにした(Nature Communications, 2019)。研究目標[4] 「エピゲノム制御を標的としたがん細胞の運命制御の可能性を提示する」については、膵がんモデルでは細胞のアイデンティティーを規定するエンハンサー活性の維持により膵がん発生を抑制できることを示し、明細胞肉腫モデルではエンハンサー活性を抑制する薬剤により細胞老化を誘導しがん細胞の増殖を抑制できることを明らかにした。実際にエピゲノム制御を標的としてがん細胞の運命制御が可能であることを示した。
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