研究課題/領域番号 |
18H04033
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鵜殿 平一郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50260659)
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研究分担者 |
城口 克之 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (00454059)
菱木 貴子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10338022)
久保 亜紀子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50455573)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Nrf2 / mTORC1 / p62 / 解糖系 / 腫瘍血管 / CD8TIL |
研究実績の概要 |
メトホルミン投与により、CD8TILsにおけるmTORC1/Nrf2/p62 axisが活性化されることを2系統のconditional KOマウスを用いて明らかにした。即ち、活性化CD8T細胞のみでNrf2またはp62を欠損させる系で、メトホルミンによる抗腫瘍効果が完全に消失することを確認した。一方、抗PD-1抗体による抗腫瘍効果にはNrf2は無関係であることがわかった。メトホルミン投与時のCD8TILsにおけるmTORC1の活性化は、オートファジー阻害剤、グルタミノリシス阻害剤で完全に消失することを確認できた。mTORC1/Nrf2/p62 axisの活性化はCD8TILsの細胞増殖に必須であるが、IFNg産生には関係がなかった。しかし、mTORC1/Nrf2/p62 axisの活性化には解糖系の亢進が不可欠であることがわかった。これまでのCD8TILsの解析は、フローサイトメトリーによる免疫学的解析が主であったが、免疫組織化学染色により、浸潤CD8TILsの増加とFoxp3+細胞の減少、腫瘍血管内皮細胞と周被細胞との関係がわかった。より多くの周被細胞が血管内皮細胞を取り囲む様子が観察された。デキストラン-FITCをマウス尾静脈より投与し、腫瘍血管からのリーク実験を行った。その結果、メトホルミン投与によりデキストラン-FITCの漏出が減少し、腫瘍血管の正常化が促進される可能性が新たに見出された。さらに、In situ代謝解析法で特定のアミノ酸と治療効果の関連性があることがわかった。その意味するところは現時点で不明である。今後続けて、立体的に腫瘍微小環境における免疫細胞とがん細胞の攻防を可視化する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD8TILsの機能解析は完成に近づいた。論文投稿を続けており、何とか早く受理される様、頑張りたい。一方で、腫瘍血管の正常化と、どの様な分子機構が正常化の方向に誘導するのかについて明らかにできる可能性を新たに見出したことは非常に大きい。何故なら、腫瘍血管が正常化しないとエフェクターT細胞は腫瘍に浸潤することができないからである。腫瘍微小環境を総合的に解析できる足掛かりを掴んだことは今後の展開を考える上で予想外の進歩と言える。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍血管の正常化はどの様なメカニズムで行われるのかを明らかにする。これはCD8TILsの活性化と増殖に直結する問題であり、両者は互いに連動すると考えられる。解析のために腫瘍組織の免疫組織化学染色を鋭意進めていく。In situ代謝解析法で得られた結果と腫瘍血管の正常化がどの様に結びつくのかを併せて検討していきたい。腫瘍微小環境においてT細胞とそれを取り巻く組織との関係、さらにその分子メカニズムを詳細に明らかにする。
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