研究課題/領域番号 |
18H04034
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
広田 亨 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 部長 (50421368)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分裂期キナーゼ / 染色体不安定性 / Aurora B / HP1 / タンパク質構造解析 / がん |
研究実績の概要 |
Aurora Bによる動原体分子のリン酸化はその重要性にも拘わらず、実際には酵素と基質が空間的に離れていることは看過され、キナーゼ活性がいかに基質に届くのかは不明であった。今年度は以下のとおり、セントロメアにアンカーしたCPCがいかにして動原体に届くのかを説明するうえで重要な知見が得られた。これによって、INCENPの伸長可能距離によりAurora Bの活性が及ぶ範囲が規定されるので「なぜ正しい結合は安定だが、エラーは解消されるのか」という「結合エラーの選択的修復機構」の解明に向けてさらに研究を進めていきたい。
1)Aurora B複合体を精製したリコンビナントタンパク質を取得し、その液体中の動態を高速原子間力顕微鏡(AFM)で解析したところ、タンパク質の構造予測のとおり、この複合体は伸長と収縮を繰り返す動的構造をとることが示された。 2)Aurora B複合体の動態はHP1の存在によって伸長したコンフォマーが安定的に観察された。このこととから、HP1がCPCに結合することで複合体全体の構造変化をきたし、それが動原体分子のリン酸化反応を促進する可能性が導き出された。 3)CPC複合体におけるAurora BとINCENPのアミノ末端側は、収縮時には近傍に位置しFRET反応が起こるが、伸長時にはそれが起こらなくなると予測される。このコンフォマーの変化を細胞内で捉えるためにFRET反応を利用したプローブの構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CPC複合体のなかでINCENPの発現量が低くかつ不安定であり、精製リコンビナントタンパク質の取得法の至適化に時間を要した。試行錯誤ののち、ようやく安定供給が可能になったので今後の研究の速度を戻していき遅れを取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
試験管内でCPC複合体の構造特性が再現性をもって見えてきている。今後は、それが細胞のなかのどのような状況で利用されているのか、その構造特性の意義を追求していく。それを明らかにしていくことによってがん細胞のCPCの機能低下を説明に繋いでいきたい。
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