研究課題/領域番号 |
18H04035
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
片岡 圭亮 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (90631383)
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研究分担者 |
白石 友一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (70516880)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 悪性リンパ腫 / CRISPR |
研究実績の概要 |
成人T細胞白血病リンパ腫や節外性NK/T細胞リンパ腫などの難治性リンパ腫における網羅的な遺伝子解析により多数の新規遺伝子異常が同定されてきたが、その多くで生物学的な役割は不明なままである。本研究では、CRISPRスクリーニングを用いて、難治性リンパ腫で認められる機能喪失型の異常がリンパ腫発症に果たす役割を高効率に解明することを目指す同時に、リンパ腫発症に寄与することが判明した遺伝子異常を個別に導入することで、様々な遺伝子異常を持つリンパ腫モデルを得ることを目指す。さらに、同モデルを用いて、遺伝子異常に応じた分子病態や薬剤感受性の違いを明らかにすることを試みる。
具体的には、難治性リンパ腫で機能喪失型異常が生じる遺伝子を標的とするsgRNAライブラリーを、Cas9発現マウスの造血幹前駆細胞分画に導入・移植した。その結果、移植後約50~300日程度で80%以上のマウスにおいて造血器腫瘍の発症を認めた。さらに、発症した腫瘍には、B細胞性およびT細胞性のリンパ系腫瘍だけでなく、骨髄系腫瘍が含まれていた。また、アンプリコンシーケンスにより、発症した腫瘍で濃縮されているsgRNAを検索した結果、全体としては、Trp53、Cebpaなどの遺伝子が濃縮されていたが、リンパ腫を発症したマウスでは、Btg1やKmt2dなどのリンパ腫関連遺伝子が多く認められた。これらの結果は、本in vivoスクリーニング法により、リンパ腫発症に関与する遺伝子が同定可能であることを示している。
さらに、Pd-l1 3′-UTR条件的ノックアウトマウスを用いた場合に、腫瘍化が促進されるだけでなく、B細胞性腫瘍が増えることが明らかとなった。この結果は、Pd-l1遺伝子異常による腫瘍化能を示すだけでなく、協調分子が明らかでない場合でも、生体内における腫瘍化能の評価が可能であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り、1年度目に、CRISPRライブラリの作成、および、野生型マウスにおける移植実験を行うことが出来た。さらに、それらの実験を継続することで、2年度目に、多数のリンパ腫を含む造血器腫瘍を発症したマウスを得ることが出来た。既に生体内での機能が知られている遺伝子以外に複数の遺伝子を標的とするsgRNAが濃縮されていることを同定できており、計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本性ん体内スクリーニング実験を継続し、野生型マウスを用いて様々の異常を持つリンパ腫モデルを作成すると同時に、低~中頻度にリンパ腫を発症すると予想される遺伝子改変マウス(HBZ発現マウスやPd-l1 3′-UTR条件的ノックアウトマウス)を用いて、腫瘍化を促進する遺伝子異常の同定も試みる。 さらに、上記の実験により得られたリンパ腫モデルを多数得ることで、遺伝子異常に応じた分子病態や薬剤感受性の違いを検証する。具体的には、各々の遺伝子異常を持つリンパ腫モデルから腫瘍細胞を採取し、RNAシーケンスによる遺伝子発現解析を行い、各々の遺伝子異常が引き起こす遺伝子発現パターンの特徴について明らかにする。同時に、それらを相互に比較することで、それぞれの共通点や相違点を明らかにする。また、表面マーカー解析により、リンパ腫の起源となった正常細胞を同定し、遺伝子発現パターンを比較する。
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