研究課題/領域番号 |
18H04041
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 良輔 京都大学, 医学研究科, 教授 (90216771)
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研究分担者 |
秋山 央子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (80623462)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 多系統萎縮症 |
研究実績の概要 |
PDモデル動物である変異型αsyn BAC Tgマウスの脳の脂質分析を行った。野生型マウスと比べ、変異型αsyn BAC Tgマウスでは、大脳皮質においてグルコシルセラミドとガラクトシルセラミドが有意に増加し、嗅球においてガラクトシルセラミドが有意に増加していた。グルコシルスフィンゴシンとガラクトシルスフィンゴシンについては、野生型と変異型αsyn BAC Tgマウスとで有意な差はなかったが、グルコシルスフィンゴシンは変異型αsyn BAC Tgマウスの大脳皮質と嗅球において、野生型よりも増加傾向が見られた。これらの脂質の毒性とパーキンソン病や多系統萎縮症で蓄積が認められるαシヌクレインの影響について、In vito、細胞での検証を行った。In vitroの無細胞系の実験では、既報告と異なり、脂質はαシヌクレインの凝集形成に対して抑制性に働き、さらに毒性が高いとされるオリゴマー形成も抑制されることが判明した。αシヌクレイン-GFPを恒常的に発現する細胞においても、外因性のαシヌクレイン凝集体による内因性のαシヌクレイン凝集形成の検証では抑制性に働くことが判明した。脂質の蓄積とその分解系の障害との因果関係を検証する必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パーキンソン病モデル動物における脂質解析が進捗しており、また脂質とパーキンソン病・多系統萎縮症の原因物質であるαシヌクレインの相互作用の検証も、無細胞系・細胞系で検証が進んでいる。αシヌクレインの発現を抑制する物質に関しては、複数の物質と共通する化学式の骨格を同定できているが、in vivoでの検証が今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの脳内におけるニューロン、オリゴデンドロサイトなどの細胞種特異的な糖脂質(オリゴデンドロサイトにおけるガラクトシルセラミド・ガラクトシルスフィンゴシンなど)の蓄積とその細胞毒性との関連を、FACS・MACSでの細胞sortingを利用して引き続き質量分析器を使用して検証していく。また、細胞系の実験をより生体に近い条件で行うために、脂質分解酵素の導入やsiRNAなどの阻害実験を行ってin vitroでの細胞障害性・αシヌクレインに対する影響をより正確に検証していく。αシヌクレインの発現を抑制する物質に関しては、in vivoでの検証を施行していく予定である。
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