研究課題/領域番号 |
18H04045
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
山村 隆 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所, 特任研究部長 (90231670)
|
研究分担者 |
大木 伸司 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第六部, 室長 (50260328)
北條 浩彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 神経薬理研究部, 室長 (60238722)
林 幼偉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 免疫研究部, 併任研究員 (80392439)
佐藤 和貴郎 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 免疫研究部, 室長 (90469990)
大島 登志男 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20311334)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 神経・免疫・内分泌相関 / 中枢神経慢性炎症 |
研究実績の概要 |
ヒトEomes陽性Th細胞と中枢神経系慢性炎症病態の関連: 本年度は、Eomes陽性Th細胞が、二次進行型多発性硬化症(secondary progressive MS; SPMS)患者の末梢血において、再発寛解型MS (RRMS)、一次進行型MS(PPMS)や健常者の末梢血と比較して、有意に増加していることを示し、Eomes陽性Th細胞がSPMSの重要な診断バイオマーカーになり得ることを論文として発表した(Raveney et al. PNAS 2021)。また同細胞がGranzyme Bを産生する細胞障害性T細胞であることをフローサイトメーター解析により証明し、末梢血のT細胞のGranzyme B産生のELISPOTによる評価が、SPMSの診断に有用なことも示した。同細胞の誘導機序におけるプロラクチンの関与については、ヒトPBMCを用いた in vitro培養系で証明することに成功した(未発表)。 従来SPMSの診断には平均して3年の観察期間が必要とされてきたが、我々の研究成果により、SPMSの早期診断が可能になった。またSPMSとPPMSでは類似した発症機序が推定されてきたが、我々の研究により、両者は明確に異なることが示された。 SPMSの剖検例の脳組織よりリンパ球を直接分離してフローサイトメーターで解析する技術を応用することにより、SPMSの大脳白質に大量のリンパ球浸潤が存在し、それらの大部分がEomesとGranzyme Bを発現していることを確認した(Raveney et al. PNAS 2021)。 制御性T細胞 (Treg)における内分泌因子産生に関する研究:CD69+CD103+ T regの誘導機序の解明に、PLP peptide/MHC-class II pentamerを用いた解析やin silico 解析を実施して、論文投稿の準備を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Eomes陽性Th細胞の誘導機序やヒト疾病における関与の証明については、PNASに論文を掲載することが叶い、学術領域における実質的な貢献ができた。Eomes陽性Th細胞のSPMS患者末梢血における増加については、ドイツのGold教授のグループによって再現されたことは喜ばしい(学会発表予定)。プロラクチンの免疫制御能に関する研究については、Karolinska研究所よりプロラクチン阻害剤を用いた共同研究の申し出があり、海外でも注目されていることがわかった。また制御性T細胞の研究においても、独創的な研究成果が挙がってきており、シンポジウム発表のあとに、権威者から評価されたこともあり、一流雑誌での掲載を狙えるデータが揃ってきたから。
|
今後の研究の推進方策 |
Eomes陽性Th細胞の性状解析を進め、この細胞がさまざまな神経炎症性疾患の発症に関与することを示すことによって、これまれの我々の研究が正当な評価を受けるようになると考えている。既に、脳浸潤Eomes陽性Th細胞に対するTCRレパトア解析、同細胞の認識するリガンドの同定などの研究で重要なpreliminary dataを得ているので、研究の方向性は明確になっていると考えている。得られた情報を元に、画期的な創薬につながる研究を進めていきたい。プロラクチンとEomes陽性Th細胞の関連については、プロラクチンシグナルの選択的な阻害剤などを導入して、より明確な結果を示したいと考えており、そのなかでKarolinska研究所との共同研究も視野に入っている。
|