研究課題/領域番号 |
18H04056
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
後藤 昌史 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50400453)
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研究分担者 |
稲垣 明子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20360224)
村山 和隆 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (40400452)
木村 睦 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60273075)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞デバイス / 膵島移植 / 肝細胞移植 |
研究実績の概要 |
移植医療は良い面ばかり注目されるが、あまり認識されていない深刻な課題こそが生涯に渡る免疫抑制剤の服用である。それにより副作用の発現や高額な医療費がもたらされ、特に近年悪性腫瘍の発生率増加が大きな社会問題と化している。この解決法として最も期待されているのが免疫隔離能を有する細胞デバイスの活用である。しかし患者が最も恩恵を受ける理想的移植部位である皮下への細胞封入デバイスの移植は、実用化とは程遠いのが現状である。本研究では、申請者等が独自に開発を進めてきた免疫隔離細胞デバイスと皮下における新生血管誘導手法を組み合わせ、糖尿病や肝不全治療を雛形として、夢の治療と考えられてきた“皮下における免疫抑制剤を必要としない移植医療”を実現するための基盤構築を目指す。本年度は、初年度に実施した免疫隔離細胞デバイスおよびADSC(脂肪組織由来間葉系幹細胞)デバイスの物性の至適化、昨年度実施したリコンビナントペプチド(RCP)とADSCを組み合わせる皮下前処置システムの至適化の成果に基づき、樹立したプロトコールの実際の糖尿病治癒効果について糖尿病動物の皮下移植モデルを用いて検証を行った。その結果、RCP単独では約50%の治癒率であり、ADSC単独でも約60%の治癒率であることが明らかとなった。検証の結果、ADSCの皮下前処置効果にはロット格差が影響することが判明したため、当初の実験計画には組まれていなかったものの、ロット格差がないために実用性が高い不織布構造のゼラチンシートの皮下前処置効果についても検証を追加し、治癒率が100%に達することが明らかとなった。その機序として、ラミニン、コラーゲンIII、コラーゲンIVなどの細胞外基質の増強に加えて、不織布構造に入り込んだホスト細胞由来のIGF-2やHGFといった成長因子が、移植部位である局所において持続的に供給されることを明らかとすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、昨年度までに樹立した免疫隔離細胞デバイスの皮下移植に関する至適プロトコールの実際の糖尿病治癒効果について、糖尿病動物の皮下移植モデルを用いて検証を行った。その検証の結果、ADSCにはロット格差が存在することが明らかとなったため、本年度後半には、当初の実験計画には組まれていなかったものの、ロット格差がないために実用性が高い不織布構造のゼラチンシートの皮下前処置効果についても検証を追加し、想定以上の極めて高い効果を発揮することが判明した。この成果をもとに連携企業と知財を4件出願し、効果的な産学連携を推進することができたため、本年度の研究計画は当初以上に極めて進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究を推進する事により、目的とする免疫抑制剤を使用しない皮下細胞移植を実現するためには、不織布構造のゼラチンシートによる皮下前処置が有用であることが判明したため、2021年度は本年度の成果を基に実際の糖尿病大動物を用いた移植実験による検証を実施していく予定である。また、当初予定していた通り、開発細胞デバイスの肝細胞移植への応用についても、まず肝不全ラットモデルを使用して検証していく予定である。
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