研究課題
最終年度は、新規DDSの開発に向けて集中的に研究開発を行った。これまで動物実験で利用してきたスーパーアパタイトナノ粒子による核酸送達システムはリン酸カルシウム法の一亜型であり、簡便で安価である点、腫瘍に対する生物効果が高い点で優れたDDSである。しかし、カニクイザルに投与するとASTやALTの上昇がみられ、蛍光核酸を用いた追跡実験でも依然として高いレベルで肝臓への核酸の集積が見られた。一方、リン酸カルシウム法の欠点として、ウイルス系の遺伝子導入法に比べて遺伝子発現効果が弱いということが指摘されている。そこで、私達は、腫瘍への取り込みを2倍以上、肝臓への取り込みを10分の1以下にすることを目標として新規DDSの開発を進めた。抗癌剤を内包した炭酸アパタイト法ではPEG化によって細胞への取り込みが上昇したという報告があり、まずこれを試してみたが、従来の炭酸アパタイト法と比べて核酸の送達能には効果がなかった。そこで化合物A、B、 C、D、Eを適正な濃度と条件で製造過程に取り入れ、試作を繰り返した結果、化合物Bがヒットし新たなDDS iNaDが誕生した。iNaDは粒子あたりの核酸搭載能力を飛躍的に向上させた結果(約7倍)、腫瘍への核酸の取り込みは格段に上昇した。一方、肝臓や他の正常臓器への集積はほとんど見られなくなった。化合物Aの分子構造でどの部分が重要かを調べるために、阪大薬学部と共同で不要と思われる部分を除去した化合物B2、B3を作成した。B2はBと同様の生体効果を示し、B3は腫瘍への集積は上昇したが、肝臓への取り込みは変化がなく、B2が最も優れた性能を発揮することがわかった。更にB2を日本とドイツ、中国の別の工場3箇所で作成し、日本とドイツ性の化合物はいずれも腫瘍への高い集積性と正常臓器への集積が見られ、工場レベルでも大量生産が可能ということが分かった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Br J Cancer
巻: 122 ページ: 1037-1049
10.1038/s41416-020-0758-1