研究課題/領域番号 |
18H04061
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
千葉 親文 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80272152)
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研究分担者 |
貴志 和生 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40224919)
田谷 雄二 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30197587)
成島 三長 三重大学, 医学系研究科, 教授 (80431873)
佐藤 貴彦 藤田医科大学, 医学部, 講師 (30570775)
谷端 淳 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (00508426)
加治 優一 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (50361332)
外山 史 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (60323317)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 再生 / アカハライモリ / リプログラミング / 瘢痕 / 創傷治癒 / 線維化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「ヒトの体細胞にイモリ型のリプログラミングを惹起する因子の解明に挑む」とともに「イモリの利用を医学の様々な分野に浸透させる」ことにより、イモリ型の臓器再生に向けた現実的な工程表を完成させることである。そのために、1)成体マウス肢切断-瘢痕治癒過程を記述し、成体イモリの肢再生過程と対応付けた。一方、骨格筋追跡マウスの妊孕性が極めて低く系統を維持することが困難であったため、新たなマウス系統を作製する方向に転換した。この系統を用いて、骨格筋線維が瘢痕治癒過程に関わるか調査する。2)成体マウス網膜剥離-増殖膜形成過程の解析を進めるとともに、RPE細胞追跡マウスの評価・生産・飼育を継続した。現在、RPE細胞の動態を解析している。3)骨格筋追跡イモリを用いて、骨格筋線維が幼生期にすでに脱分化能力をもつこと、しかしその能力は生体内では抑制されており、脱分化能力の解放には変態と体の成長の組み合わせが必要であることを明らかにした(査読中)。一方、RPE細胞追跡イモリの解析により、RPE細胞のリプログラミングは変態直後に見られることが判った。これらの結果から、脱分化・リプログラミングに対するゲノム・エピゲノムおよび細胞外環境の重要性が明らかになった。4)哺乳類とイモリの双方において、骨格筋線維とRPE細胞の脱分化/リプログラミングを培養下で再現する条件及び候補因子の探索を進めた。イモリの骨格筋線維において、脱分化と再分化を再現し、しかも哺乳類と互換性のある培養条件を見出した。RPE細胞についても評価中である。血液を含むイモリの体組織由来成分の評価を進めた。5.アカハライモリのオミックスデータベースの利用を進めた。6.イモリの医学分野への導入を推進した。皮膚と顎、肢(リンパ)の再生について、イモリとヒトの比較研究を支援した。皮膚再生の研究成果を国際誌(査読付)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変マウスを用いたin vivo研究は遅れているが、遺伝子改変アカハライモリを用いた研究がin vivoとin vitroの両面から進展している。特に、イモリにおいて、脱分化と再分化を再現し、哺乳類とも互換性のある培養系が確立した点は大きな進展であり、今後のsingle-cell解析および哺乳類細胞との比較解析により、当初目的である「イモリ型の臓器再生に向けた現実的な工程表の完成」に大きく近づいたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
1)骨格筋だけでなくRPE細胞においても、イモリの再生現象を体外で再現する培養系の確立を急ぐ。骨格筋については、in vitroでの脱分化と再分化過程をin vivoの現象と比較しつつ特徴づけるとともに、脱分化細胞のsingle-cell解析により、その遺伝子発現様式について幹細胞との共通性と違いを明らかにする。 2)遺伝子改変マウスを用いた外傷後の細胞追跡実験についても、イモリの再生時の細胞動態と比較しつつ記述を完了する。遺伝子改変マウスは、培養下での脱分化-再分化実験にも利用するため必須である。 3)イモリの再生に関わると推定される細胞外因子については、血液由来因子に絞って評価を進める。特に脱分化・リプログラミング能力の抑制(つまり、分化状態の維持)とその開放に関わる細胞外因子が何なのか問う。 4)アカハライモリのオミックスデータベースの利用促進及び医学分野への展開の取り組みを引き続き進める。共同研究実績をアウトリーチ活動や国際誌を通して発表する。
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