研究課題/領域番号 |
18H04064
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 修 京都大学, 医学研究科, 教授 (90260611)
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研究分担者 |
山崎 俊成 京都大学, 医学研究科, 講師 (00607749)
赤松 秀輔 京都大学, 医学研究科, 助教 (20767248)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エクソソーム / 患者癌組織由来ゼノグラフト / 薬剤抵抗性 / 転移形成 / 腫瘍間質相互作用 |
研究実績の概要 |
薬剤抵抗性機序の研究については、スニチニブ耐性PDXモデル(KURC1)を樹立し、その新鮮組織培養液からエクソソームを回収する系を確立した。in vivoにおいて、腫瘍表面にエクソソームを注射すると腫瘍組織内にエクソソームが取り込まれることも確認できた。 また、スニチニブ耐性モデル、感受性モデルの新鮮組織由来エクソソームに含まれるmiRNAの解析を行った。この結果、スニチニブ耐性モデル由来エクソソームで有意に発現が上昇しているmiRNAのうち、癌の悪性化や進展に関わるものとしてmiR-494-3p、miR-29a-3pに注目した。これらのmiRNAの標的遺伝子とされるPTENやTET1はスニチニブ耐性腫瘍において感受性腫瘍より発現が低下していることがタンパクレベルで示された。さらにTET1についてはスニチニブ耐性モデル由来エクソソームを腎癌細胞株Caki-1に添加すると発現が低下するという結果が得られた。 転移の研究については、腎細胞癌骨転移の臨床検体から安定継代できるPDXを樹立することができた。また、骨でのin vivo selectionによって骨転移指向性を高めた細胞株の培養上清から回収したエクソソームのタンパクを親株のそれとLCMSにて網羅的に比較検討した結果、タンパクのプロファイルが異なるという結果が得られた。骨転移指向性の細胞株由来エクソソーム中で発現が上昇しているタンパクのうち、細胞懸濁液と比較してエクソソームでより濃縮されているということからAminopeptidase N/CD13に注目した。加えて、このエクソソームをヌードマウスに静脈注射して経過を観察したところ、骨髄の組織学的所見に変化を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までの研究で、スニチニブ耐性のPDXモデルが樹立できており、新鮮腫瘍組織培養液からエクソソームを回収する系が確立できている。またそれぞれのエクソソームのmiRNAの比較から、耐性モデル腫瘍由来エクソソーム中で発現上昇しているものの中から癌の悪性化や進展に関わるものが同定された。 スクリーニングの部分についてはmiRNAの網羅的解析の結果は出ているものの、臨床検体由来のエクソソームを使った検証には進めておらずやや遅れている。機能解析については、現在絞り込んだmiRNAの候補の機能解析をこれから進めていく予定としておりおおむね予定通りである。エクソソームのPDXへの投与実験については現在投与の条件を検討している段階で、適切な条件が決まり次第始められるので、おおむね予定通りである。マーカー開発については、今回絞り込んだ候補の検証をこれから開始するところであり、遅れ気味である。 以上から、総合的に勘案して本研究課題全体の進捗状況をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は薬剤抵抗性の研究については、スニチニブ耐性、感受性それぞれの新鮮組織由来エクソソームを投与することで腫瘍のスニチニブへの感受性が変化するかどうかを観察する予定としている。 また、耐性モデル腫瘍由来エクソソーム中で発現上昇がみられたmiRNAをノックダウン、過剰発現した腎細胞癌細胞株を作成し、培養上清中に分泌されるエクソソームを回収してmiRNAの発現の変化を確認する。そののち、in vivoにおいては培地にスニチニブを添加したうえでの増殖の変化を観察する。in vitroではそれぞれの エクソソームと共培養した細胞を用いてゼノグラフトモデルを作成し、スニチニブ投与下しおいて腫瘍増殖に差が出るかを評価する。 また、今回のmiRNAの解析で同定したもののバイオマーカーとしての評価を臨床検体を用いて行っていく予定としている。よいバイオマーカー候補が絞り込めれば、さらにそれらの臨床応用に向けてハイスループットな測定系の開発に向けて取り組んでいく予定としている。
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