研究課題/領域番号 |
18H04066
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
東 みゆき 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90255654)
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研究分担者 |
永井 重徳 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (50348801)
河野 洋平 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20401383)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 免疫制御 / 口腔粘膜 / 口腔癌 / 免疫チェックポイント分子 / T細胞 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究実績としては、①口腔の舌下粘膜への反復抗原刺激により誘導される CD206陽性マクロファージ様細胞についてと②マウス舌癌モデルにおける免疫微小環境の特徴に関して、興味ある成果を得た。 ①舌下粘膜は、舌下粘膜療法においてアレルゲン特異的免疫寛容の誘導部位として使用されているが、舌下粘膜である意義については不明である。舌下粘膜への反復抗原塗布により、優位に増加する CD206陽性細胞の性状を検討した結果、 そのフェノタイプは CD11b+Ly6C+F4/80+CD64+の組織在住マクロファージ型で、 M2マクロファージに発現するTim4タンパクや Fizz1, Aldh1a遺伝子などを高く保持している反面、Ym-1と Arginase-1遺伝子は持たないというユニークな特徴が見られた。この CD206陽性マクロファージは、直接 T細胞機能を抑制するというより、抗原刺激による樹状細胞の分化・成熟を抑制することで、免疫抑制に関わっている可能性が、 in vivo および in vitroの実験から示された。 ②がん微小環境、特に免疫動態は癌発育や治療効果に多大な影響を与える。同所性に扁平上皮癌 (SCCVII)を接種したマウス舌がんモデルを樹立し、免疫細胞動態をマルチプレックス蛍光免疫染色で、皮下接種モデルと比較検討した。 舌SCCでは、 CD8+T細胞もしくは Foxp3+制御性 T細胞 (Treg)を主体とするリンパ球浸潤ががん辺縁に認められたのに対して、皮膚SCCでは、腫瘍全域に、 Tregを主体とする T細胞浸潤を認め、舌と皮膚では、異なる癌細胞ーT細胞相互作用の可能性を示した。樹立した舌 SCC モデルは、癌ー宿主応答の理解と治療効果の評価に役立つと思われた。 上記2つの研究成果から、口腔における免疫細胞動態の特性の一部が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔がん、中でも最も頻度の高い舌癌で、癌細胞ー免疫細胞相互作用が解析できるマウスモデルが樹立でき、それを用いて成果を出すことができたことは、評価できる。マウスでの解析を、次年度はヒト舌癌での解析に発展させ、免疫チェックポイント分子を含めたがん微小環境における免疫細胞の統合的解析を進めることができる。 口腔慢性病変のマウス頬粘膜モデルでの解析は、若干遅れているが、レジデントメモリー T細胞や局所に存在する制御性 T 細胞の存在を掴んだので、次期に向けて研究を進展させることができる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、最終年度であるので、ヒト舌癌検体を使用した解析を実施し、マウスモデルとの異同について、明確にしていく予定である。さらに、反復抗原塗布により出現する CD206陽性マクロファージに発現する新規免疫チェックポイント分子の解析も進展させたい。
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