研究課題/領域番号 |
18H04067
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山崎 和久 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00182478)
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研究分担者 |
大野 博司 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50233226)
奥田 修二郎 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00512310)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯周病原細菌 / 腸内細菌 / オーミクス解析 / 口ー腸連関 |
研究実績の概要 |
歯周炎は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の発症・進行のリスク因子とされているが、そのメカニズムは明らかになっていない。その解明のため、平成31年度に作成したNASHモデルマウス(C57BL/6マウスに歯周病原細菌を口腔投与後、コリン欠損高脂肪食を給餌)から得られた肝臓サンプルのマイクロアレイ解析、糞便サンプルのメタ16S rRNA遺伝子解析、血清メタボローム解析を行った。 その結果、歯周病原細菌Prevotella intermedia(Pi)は肝脂肪変性を促進し、Porphyromonas gingivalis(Pg)はさらに重症化させた。肝臓での遺伝子発現プロフィールを解析した結果、高脂肪食投与は肝臓での遺伝子発現を大きく変化させた。さらに、Pi、Pg投与は高脂肪食投与のみと比較しても明らかな発現プロフィールの変化を示し、投与菌種の違いによる影響も明らかになった。発現量が有意に異なると思われる遺伝子について定量的PCR法により確認を進めている。 糞便細菌叢の解析から歯周病原細菌投与は腸内細菌叢の多様性を低下させることが明らかになった。高脂肪食の給餌の影響は歯周病原細菌投与によるα多様性への影響をマスクしたが、β多様性については細菌投与の影響が明らかであった。 血中内毒素量は高脂肪食群<Pi投与群<Pg投与群であった。大腸のタイトジャンクションタンパクをコードする遺伝子であるTjp1はPg投与群において他群より低下する傾向にあり、E-cadherin発現はPg群で明らかに低下していた。血中メタボロームデータは解析途中であるが、肝遺伝子発現プロフィールと同様、各群間において明らかに異なるプロフィールを示した。 これらの結果から、Pg投与は腸内細菌を変化させ、腸管のバリア機能低下を誘発することで軽度内毒素血症を引き起こし、肝臓の機能に影響をあたえることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NAFLDモデルの解析が順調に進み、仮説に合致する結果が得られつつある。糞便移入モデルも本実験が開始され、高脂肪食給餌マウスと普通食給餌マウスの糞弁を回収し、抗生物質投与マウスへの移入と、絹糸結紮による実験的歯周炎の惹起を行った。
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今後の研究の推進方策 |
NAFLDモデルマウスについては、コントロールとして健康な口腔細菌叢を代表する細菌の実験を開始し、歯周病原細菌の影響をさらに明らかにするとともに、肝組織中の代謝物解析、口腔細菌投与により変動する腸内細菌種の同定を行う。糞便移入モデルについては、腸内細菌叢の変化が実験的歯周炎に及ぼす影響と原因物質の同定を試みる。
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