研究課題/領域番号 |
18H04070
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 英樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50317682)
|
研究分担者 |
飯塚 敏晃 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00406810)
松居 宏樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (70608794)
合田 和生 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80574699)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 人口高齢化 / 社会保障負担 / 疾病負担 / 将来推計 / ミクロシミュレータ |
研究実績の概要 |
本研究事業は4年間の研究期間を通じて既存開発中の高齢者将来疾病・機能状態シュミレーターを拡張することで 1)高齢社会の社会保障(医療介護・年金)費用と就労・所得納税などによる財政貢献のネ ットのインパクトを推計する、 2)それを用いて仮想政策シナリオ(引退年齢引き上げ、医療技術による健康寿命の延長など)のインパクトを検討する、 3)同様のモデルをすでに開発した米英(Goldman, et al. 2009など)を中心に比較研究を行い、高齢社会における人的資本のマクロ経済影響の将来推計を、ミクロシミュレーターで検討する枠組みを構築するものである。2019年度は、死亡・疾病移行モデルを学歴別の移行確率を導入することで精緻化するとともに、就労・引退モデルの学歴別動向とマッチさせる枠組みを完成させた。その結果、学歴モデルで推計した場合、特に脳心血管系疾患の罹患確率がさらに低下し、将来有病者数がさらに下方修正されることが明らかとなる一方、悪性新生物では罹病期間の延長(生存期間の延長)により有病数がやや上方修正された。就労・引退モデルについては、当初既存社会調査JSTARを用いて年齢・学歴・性別に加え、就労タイプ(フルタイム・パートタイム・自営・就労なし)と死亡疾病移行モデルに含まれる疾患および併存症数を取り込んだフルモデルを作成したところ、推計回帰係数に理論的不具合が発生することが確認されたため、国民生活基礎調査の横断データを用いた推計を追加実施した。医療介護費については、2020年度より医療・介護のレセプト突合データが公開される見込みとなったことから、NDBの新規申請を見送ることとしたが、2020年3月からの新型肺炎拡大の影響を受け、やや見通しが不安定なものとなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年統計法の改正に伴い、当初利用期間延長申請で入手できる見込みであった政府統計個票がすべて再申請せざるを得なくなり、その手続きに時間を要した。総務省統計(国勢調査・全国消費実態調査)については10月に利用可能となり、前年度まで進めていた学歴による死亡率推計の作業を再開し、学歴別の罹病・死亡移行確率の推計結果の妥当性検証を進めた。また全国消費実態調査を用いた医療介護費負担の推計も進めることができた。一方厚生省関連統計、特に就労に関する情報が豊富な国民生活基礎調査の入手が遅れたため、既存社会調査(JSTAR)の個票を用いて引退・就労移行モデルの初期モデルを求めたが、既存研究の結果との乖離が見られ、国民生活基礎調査データの入手を待たざるを得なかった。2019年度内の入手を期待したが2月以降の新型肺炎感染拡大の影響を受け、厚労省の統計部門の処理スピードが落ちたため、現時点でまだ入手出来ておらず、昨年度中に実施した解析の2次解析の範囲で、引退就労移行確率の推計を進めた。新規データが入手され次第、モデルの再検討が必要である。なお高齢者の学歴別・就労形態別の平均賃金の推計を、公表されている就労基本調査などのデータから推計し、移行確率が得られ次第、将来の高齢者就労者(学歴・就労形態別)の推計を得て、医療介護費などの社会保障費と、労働収入による税収の推計に進める準備を鋭意進めている。なお学歴別死亡確率を導入する以前の疾病移行モデルについては査読付き英文雑誌に採用され、学歴を導入後の論稿についても近く投稿予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
厚労省系の政府個票統計が入手出来次第、就労モデルを確定し、学歴別・就労形態別の労働所得・税収の推計を行い、当初予定通り、社会保障と税収のネット収支の推計を進めたのち、いくつかの健康状態介入シナリオ(より健康状態が良くなった場合、特に介護予防などの効果が期待された場合など)の政策介入のインパクト推計に進める予定である。
|