研究課題
2021年度には野生の哺乳類や鳥類などを対象に薬剤耐性菌の分布調査を継続するとともに、環境DNAに基づく薬剤耐性菌の分布要因解析を実施した。2021年度は野生哺乳類10種102頭から大腸菌224株、野生鳥類3種5羽から大腸菌12株を分離し、薬剤感受性を調べた。野生哺乳類ではシカが80頭とサンプルの大部分を占めた。薬剤耐性菌は、主にテトラサイクリンまたはアンピシリンに対する単剤耐性であったが、シカとキツネ由来1株づつで多剤耐性が認められた。2013~2017年の野生動物保存株を用いた成績と比べて大きな変化は認められなかった。食肉処理施設において処理される野生の鹿の糞便を対象に、野生動物における薬剤耐性モニタリングを試行した。2020-2021年の春夏秋冬の4回、1回あたり20検体(合計80検体)の鹿糞便から大腸菌を分離し、薬剤感受性試験を実施した。結果、106株(73検体より)の大腸菌が分離された。アンピシリン、セファゾリン、クロラムフェニコールに対して耐性を示す株が1株(1%)存在したが、最小発育阻止濃度の分布に季節性はなかった。琵琶湖全周の21地点で季節ごとに計4回の調査を実施し、採水に加えて、採水地点付近の陸上土壌の採集を行った。これらのサンプルから脊椎動物のDNA検出および薬剤耐性遺伝子の検出を行うとともに、水サンプルについては基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌を分離した。環境DNA分析により、16種の哺乳類と26種の鳥類のDNAが検出された。耐性遺伝子の環境DNA分析ではCTX-M-1型が計11地点から、CTX-M-2型が計5地点から、CTX-M-9型が計16地点から検出された。生息種と細菌の分離実験から検出された薬剤耐性遺伝子との共起分析の結果、カモ類などの鳥類が耐性菌のベクターとなることが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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