研究課題/領域番号 |
18H04075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
BECKER CARL.B 京都大学, 政策のための科学ユニット, 研究員 (60243078)
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研究分担者 |
今中 雄一 京都大学, 医学研究科, 教授 (10256919)
谷山 洋三 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10368376)
山本 佳世子 天理医療大学, 医療学部, 助教 (10625445)
近藤 恵 (有田恵) 大阪医科大学, 中山国際医学医療交流センター, 講師 (40467402)
廣井 良典 京都大学, こころの未来研究センター, 教授 (80282440) [辞退]
山田 慎也 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90311133)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 死生観 / 悲嘆 / 高齢社会 / 死別 / 医療委 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
世界に先駆けて超高齢・多死社会時代に突入した日本において、遺族の死別悲嘆を軽減するには、日本社会の実情に即したグリーフ・ケアの開発が急務ある。そこで、本研究では、日本人遺族の追跡調査を実施し、複雑性悲嘆に陥りやすい要因や、健全な死別受容がなされる要因等を分析し、死別の受容過程の解明を目指している。本研究は、日本社会のニーズに応じた独自性の高い実証研究であり、国際的議論をリードするものと言えよう。 昨年度の研究活動としては、外国文献の再確認や収集とその精読から始めた。具体的には、欧州で利用されている遺族調査の項目の和訳、日本人調査への適性等を検討した。その上で、アンケートの試作版を京都大学の倫理委員会に提出し、その助言を受けて修正を行った。また、250名を対象にしたパイロット調査を実施し、本調査に向けて改善を図り、昨年度内に本調査の用紙の印刷等の準備を完了した。 量的(統計学的)調査の準備と並行して、科研代表者と分担者が本研究テーマに関する多くの出版や口頭発表を行った。代表者のベッカーは日本人の死の覚悟に関する研究が国際誌のArchives of Gerontology and Geriatricsに紹介したのをはじめ、山田は葬儀の変容と共同性について、山本は医療・福祉職の死生観を深める教育について、谷山は遺族の「癒やし」に関して、広井が「持続可能な医療」にについて、それぞれ著書を出版した。さらに、本研究テーマに関する口頭発表や貴重講演なども、数多く行った(詳細は業績欄を参照)。以上、当初立てた計画に沿って研究を進めている。本調査の回収までの期間は、国内外の研究の動向を注視しつつ、パイロット調査で得た情報の分析も進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は倫理申請、パイロット調査の送付・回収・データ入力、パイロット調査結果に基づいた本調査の項目改善、とほぼ予定通りに研究を進めることができた。 国内の分担者チームは、メール会議に加え、5月12日、8月3日、1月28日に実際に参集して検討を重ねた。海外の調査との類似性を高めるために、欧州の協力者と二ヶ月おきにスカイプによる会議を行い、6月にはオンタリオの国際死別悲嘆ワーキング・グループと、2月には協力者3名を京都大学に招聘し、協力体制を構築した。その結果、研究をほぼ予定通り進められた。 5月から6月にかけて、外国文献を参考に、調査項目を吟味し、アンケートの叩き台を作成し、6月には上記の国際死別悲嘆ワーキング・グループにおいて改善を加えた。8月から9月にかけて倫理申請を行い、京都大学の心の先端ユニット倫理委員会の要請に応じて内容・形式・保管法等について加筆修正をした。また、アンケートの印刷や回答の入力を依頼する業者を、入札を通してMDB社に決定した。 10月から12月にかけて、東北大学の谷山洋三の寺院を中心に、半年以内に死別を経験した遺族250名に対して、アンケート調査を郵送で依頼した。 2月までに166名(匿名)分のアンケートを京都大学で回収して、MDB社にデータ入力に依頼した。1月末から2月上旬にかけて、英国バス大学の協力者3名を京都大学に招聘し、科研メンバーと共にパイロット調査のデータを分析した。加えて、パイロット調査の自由回答欄(感想文)を分析し、本調査の形式を改善した。その改善版の印刷を2月に行い、3月に本調査を実施して下さる全国葬儀社連盟とも協議を進め、具体的な手続きを含め、倫理を護る覚え書きも弁護士と交わした。以上、2019年4月からの本調査の準備を終えた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年4月-7月 (全葬連の協力で) 本調査の配布と回収:昨年のパイロット調査に基づいて、4月から改善された本調査を、全葬連を経由して、数千人の遺族に送付する。MDB社に委託して、5月から7月にかけて、その回答を入力して、統計的分析の用意をして頂く。 2019年7月-12月 本調査のデータ入力と結果の統計分析(近藤、今中、ベッカー)・協力者との面談とその解説(山田、谷山、山本、広井):2019年の後半には、量的調査メンバーは、SPSSなどによる統計的分析を試み、関連要因を明らかにする。と同時に、質的調査メンバーは、協力者の中でインタビュー調査への協力に同意を得られた者に対し、半構造的面談を行う。遺族の死別悲嘆において、何が支えになり、何がならなかったのか、葬儀や僧侶との関わりがどのように影響したか、質問紙調査では聞くことのできない、より具体的な有り様を口頭で聞き出す。信憑性を高めるためには、質的研究の経験豊かな近藤、山田、山本が平行に面接を行う。量的・質的データを得て、福祉政策に詳しい広井と今中を加え、その含意を全員で探る。 2020年1月-3月 第一調査のまとめ・執筆や報告、追跡調査の印刷や送信準備: 上記の予定通り、2019年度4月から本調査を成功させるため、より多くの郵送費、開封・入力費、追跡版の印刷費などが見込まれる。回答・回収されるアンケートの数によって、予算が大幅に左右される。余裕があれば、また欧州の協力者と会合して厚誼を重ねたいが、国内調査の作業を最優先して集中する予定である。 量的(統計学的)調査の準備と並行して、科研代表者と分担者が本研究テーマに関する多くの出版や口頭発表を続ける。本調査の回収までの期間は、国内外の研究の動向を注視しつつ、パイロット調査で得た情報の分析も進める予定である。
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