研究課題/領域番号 |
18H04080
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永富 良一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20208028)
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研究分担者 |
中村 友浩 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30217872)
村山 和隆 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (40400452)
鈴木 直輝 東北大学, 大学病院, 助教 (70451599)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨格筋衛星細胞 / P53依存性アポトーシス / プロテアソーム / アミノ酸プール / 細胞内ATP量 |
研究実績の概要 |
プロテアソーム阻害が骨格筋関連細胞(衛星細胞、筋芽細胞)において細胞内アミノ酸量やタンパク質合成に与える影響に加えて, プロテアソームによるタンパク質分解由来のアミノ酸がどのように利用されるのかを検討した. 1.プロテアソームのサブユニットRpt3の筋衛星細胞特異的欠損マウスでは骨格筋衛星細胞がp53依存性にアポトーシスにより失われることを明らかにした(業績1)。 2.プロテアソーム阻害条件でのC2C12筋芽細胞および骨格筋特異的Rpt3欠損マウス(mKO)の筋組織において細胞内アミノ酸量の有意な減少がみられた. Rpt3遺伝子ノックダウン(KD)およびMG132によるプロテアソーム阻害条件におけるC2C12筋芽細胞では, タンパク質合成経路の抑制が認められなかったにもかかわらず, 実際のタンパク質合成量は有意に減少していた. これらの結果から, プロテアソームは細胞内アミノ酸量やタンパク質合成の維持に関与する可能性が示唆された. 3. 次にプロテアソームによるタンパク質分解由来のアミノ酸が新規タンパク質合成の材料として利用されるのかを検討した. 安定同位体標識アミノ酸を含む合成タンパク質を細胞内導入し、このタンパク質がプロテアソーム依存性に分解されていることを確認した。しかし安定同位体の新規タンパク質への取り込みはみられず、新規タンパク質合成には利用されていないことがわかった。培養液中に当量の安定同位体標識アミノ酸を投与すると新規タンパク質に取り込まれていることから、プロテアソームで分解されたタンパク質由来のアミノ酸はリサイクルされていないことが明らかになった。 4. MG132によるプロテアソーム阻害あるいはRpt3欠損によるプロテアソーム不全はいずれも細胞内ATP量の減少を来すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rpt3欠損に伴うプロテアソーム不全により骨格筋衛星細胞が失われることが細胞周期制御に関わるP53依存性のアポトーシスであることを証明した。 一方、プロテアソームで分解されたアミノ酸の運命は当初の仮説と異なり、リサイクルにはほとんど利用されていないことが明らかになった。したがって3次元培養筋を利用したアミノ酸のリサイクル調節の実験には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において用いたC2C12由来の筋管細胞では、プロテアソームにより分解されたタンパク質由来のアミノ酸は新規タンパク質合成にほとんど用いられておらず、直接リサイクルされている可能性はほとんどないことが明らかになった。しかしプロテアソーム活性は細胞内のATP量の維持に関与している可能性が強く示唆され、タンパク質分解の結果生じたアミノ酸はエネルギー代謝に利用されている可能性がある。引き続きこの新たな仮説の検証を行う予定である。したがってよりin vivoに近い3次元培養筋を用いた実験ではアミノ酸リサイクルではなくATP量と関連すること、すなわち電気刺激による収縮を反復させるときプロテアソーム不全はATP量の維持ができず疲労あるいは張力の減弱が促進される可能性がある。今後はこの新たな仮説の検証を進める。
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備考 |
上記プレスリリースは同一のもの、1)は所属部局、2)は大学全体のものです
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