研究課題/領域番号 |
18H04085
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
貴島 晴彦 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10332743)
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研究分担者 |
西村 幸男 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, プロジェクトリーダー (20390693)
谷 直樹 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20598370)
押野 悟 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40403050)
柳澤 琢史 大阪大学, 高等共創研究院, 教授 (90533802)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 霊長類モデル / 頭蓋内電極 / 脳磁図 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
脊髄損傷後の代償性神経回路形成における大脳皮質活動の役割を解明し、それらを効果的に促進する治療法の開発を行うことを目的とする。そのため、脊髄損傷患者を対象とした研究と脊髄損傷動物モデルを対象とする研究を並行して行なっている。 霊長類脊髄損傷モデルの研究では、昨年度から継続しているアカゲザル1頭と2021年度には1頭で繰り返し運動ができる様にトレーニングを行なった。右手のみで繰り返し餌を獲得する課題である。頭蓋内に電極を留置する手術を行い、脊髄損傷のない状態、頚髄レベルでの左片側の脊髄損傷直後、回復期、亜急性期 での運動課題での皮質脳波の変化を計測した。残念ながら、1頭は周術期のトラブルで十分にデータを収集することができなかったが、1頭から新たに期間を通じて頭蓋内脳波データを収集することができた。これまでに行った複数の個体のデータも加えて右手の運動時の脳信号について解析を行い、脊髄損傷に関連するあるいはその回復に関連する生理学的な特徴量を検索したところ、脊髄損傷直後には損傷前に比較しγ帯域のパワーの低下とβ帯域の位相とγ帯域の振幅のPhase amplitude coupling (PAC) の低下が観察され、機能回復期においては、PACの増加に続きγ帯域のパワーの増加が観察された。 これまでに行った、脊髄損傷患者を対象とする研究では、脊髄損傷患者群とコントロール群の安静時の脳磁図データを解析した。 脊髄損傷患者の前頭葉で広範にγ帯域の活動が低下しているとともに、全脳領域において、β帯域の位相とγ帯域のパワーとPACが上昇していた。動物モデルのデータと脊髄損傷の患者データを比較しPACやγ帯域のパワーについての臨床的意義を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
霊長類モデルを用いた研究では、COVID-19の影響により、アカゲザルの入荷(輸入)に困難をきたしているが、これまでのところ解析に値するデータが概ね順調に蓄積できている。患者を用いた研究では、病院施設を使用するためボランティア患者の測定が遅れており、研究の進捗に影響しているが、プロトコールの変更などで対応している。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄損傷患者を用いた研究では、脊髄脊椎疾患で運動症状の有する患者をリクルートし症状との関連、治療介入による症状変化との関連に関わる脳内生理学的特徴量の開発を目指す。霊長類モデルについてはこれまでのデータを解析し、その特徴量を抽出する。これらのデータを比較し、脊髄損傷と運動に関わる脳内の生理学的な変化とその回復に関わる特徴量を導きだす。
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