研究課題/領域番号 |
18H04086
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
藤井 宣晴 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 教授 (40509296)
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研究分担者 |
古市 泰郎 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 助教 (40733035)
眞鍋 康子 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 准教授 (60467412)
中川 嘉 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (80361351)
出口 真次 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30379713)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイオカイン / 骨格筋 / 筋サテライト細胞 / 筋線維タイプ |
研究実績の概要 |
研究代表者は、「運動時には骨格筋から種々の生理活性物質(総称してマイオカイン)が分泌され、それらが血流を介して全身に届けられると多様な恩恵効果が発揮される」という仮説を有している。これを検証するために、申請者が発見した3種類のマイオカインについて、骨格筋での発現量を増減させた遺伝子組み換えマウスを作製・解析し、マイオカインの生理作用と標的臓器を明らかにすることを目的とした。2022年度は、骨格筋特異的にマイオカインA(仮称)を過剰発現させた遺伝子組み換えマウスの生理的役割の解明を継続し、さらにマイオカインBの生理作用の解析を行い、マイオカインCの特性解析を行った。 マイオカインAを骨格筋特異的に過剰発現させたマウスでは、最も速筋特性の高いミオシン重鎖IIbを発現する筋線維が、本来はほとんど存在しない腓腹筋において、出現していた。骨格筋の特徴は、発揮張力は強いが疲労しやすい速筋タイプの細胞と、張力は弱いが疲労耐性に勝る遅筋タイプの細胞の、構成比率で決まる。この比率は、病気や加齢によって緩やかに変化するが、基本的には遺伝的に決まっていて、発現量をコントロールする因子や方法は見出されていない。しかしマイオカインA過剰発現マウスの骨格筋では、速筋タイプ細胞が増えており、筋力を増強させる調節因子を見出した可能性を示唆している。マイオカインCは、これとは逆の作用を有していることを見出した。すなわち、筋サテライト初代培養細胞を分化誘導する初期にマイオカインCを添加すると、遅筋特有のミオシン重鎖Iの発現が高いい筋幹細胞となった。分化誘導後期に添加してもミオシン重鎖Iの発現量に変化はなかったため、分化の運命決定期での作用が予測された。マイオカインBに関しては、新たに、筋肥大をもたらす作用が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた3つのマイオカインについてその生理作用を示唆することができた。その結果井の一部は国際誌に投稿中で、また投稿準備中のものも一件あり、研究は結果を出しつつ進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、in vitroの実験結果が優先して示されてきた。本年度は、これまでに得られた知見を遺伝子組み換えマウスで得られている表現型とリンクさせ、そのメカニズムの確定と、生理的意義の理解に注力する。マイオカインA、B、Cともに、in vitro実験での作用が確認されているが、それらが必ずしもそれぞれの遺伝子組み換えマウスの表現型と、少なくとも表面的には合致していない。それらのギャップを埋め、両者の結果をリンクさせることで、生理的役割の理解を深める。
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