研究課題
(1)骨格筋局所へのメカニカルストレスによる廃用性筋萎縮抑制の分子メカニズムに関する基礎的研究・マイルドな筋収縮時に生じる筋内圧の変化(50 mmHg)を再現するマッサージ様の局所介入(局所的周期性圧迫)が、マウス後肢不動化による筋萎縮(廃用性筋萎縮)を抑制すること・この局所的周期性圧迫による廃用性筋萎縮抑制効果は、単球由来のマクロファージを除去すると消失することなどから、マクロファージにおける炎症反応、分けてもMCP-1発現の抑制が関与していると考えられること・局所的周期性圧迫は組織内の間質液を動かす(間質流を促進する)こと・局所的周期性圧迫がもたらす間質流により間質に存在する細胞に1 Pa(パスカル)程度の剪断応力刺激(シアストレス)が加わること・培養マクロファージに50 mmHgの静水圧を負荷すると炎症反応が促進され、0.5 Paのシアストレスを負荷するとMCP-1の発現が抑制されることから、廃用性筋萎縮には間質液の滞留により局所のマクロファージにシアストレスが加わらなくなったことで増悪する炎症反応が関与していること及びマッサージ様の介入が廃用性筋萎縮の予防・治療となり得ることを示し、国際学術誌(Clinical Science)に論文を発表した。(2)身体運動による脳機能維持に関する基礎的研究適度な運動を模するマウス及びラットのトレッドミル走行(速度は、ラットで毎分20m、マウスで毎分10m)で、頭部に1 Gの衝撃(加速度)が加わり、前頭前皮質(prefrontal cortex)におけるセロトニン2A受容体シグナルが抑制されることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
オステオサイトにおけるCas欠失で生じる骨量の低下が炎症性反応を介していることを示す知見が得られた。マウス後肢不動化による炎症誘導の実験系は安定しており、メカニカルストレスによる介入でもたらされる炎症抑制の再現性は極めて高い。培養細胞実験でもメカニカルストレスによる炎症抑制の対照として静水圧負荷による炎症促進の実験系を確立することができた。
不動化により炎症が誘導されたマウスの後肢骨格筋及びその周囲組織に反復性圧迫を加える実験系を発展させる。間質細胞における MCP-1の発現促進が不動化で生じる炎症に重要な役割を果たすことが分かったので、細胞種特異的にMCP-1の発現を欠失する遺伝子改変マウスなどを導入し、廃用性筋萎縮及び身体活動による筋恒常性維持の分子メカニズムの詳細を解析する。さらに、MCP-1の発現を指標に、炎症抑制効果が最大となるメカニカルストレスの強度、頻度、モードを決める。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件)
Clinical Science
巻: 132 ページ: 2147~2161
10.1042/CS20180432
Journal of Neurotrauma
巻: 35 ページ: 1358~1366
10.1089/neu.2017.5400