研究課題/領域番号 |
18H04091
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
上原 隆平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00256471)
|
研究分担者 |
齋藤 寿樹 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (00590390)
鈴木 顕 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (10723562)
川原 純 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (20572473)
伊藤 健洋 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (40431548)
山中 克久 岩手大学, 理工学部, 教授 (60508836)
吉仲 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80466424)
大舘 陽太 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (80610196)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アルゴリズム / 離散構造 / 離散数学 / 計算量 / データ構造 / 計算幾何 / グラフアルゴリズム |
研究実績の概要 |
本年度は、査読付きジャーナル論文14編(うち国際共著論文3編)と審査のある国際会議発表20編(うち国際共同研究5編)という研究成果をあげることができた。研究成果としては、グラフ上の問題や計算幾何における問題に対して、効率の良い解法を与えるアルゴリズムの開発や、逆に理論的な困難性を示す理論的な結果が主である。新型コロナ禍において、全体で集まっての対面での研究活動はほとんどできず、もっぱら研究分担者たちが個別に連絡を取り合って研究を進展させた中では十分な研究成果であると言えよう。 特に2021年11月には、オンラインと対面を組み合わせたハイブリッドな研究合宿を開催し、ある種の並べ替え問題に関する多角的な視点からの研究成果を得た。この問題はコンピュータ・サイエンスの基礎であるソーティング(並べ替え)と密接な関係を持つ問題であり、最近の理論計算機科学の一分野である組合せ遷移に関する問題としても位置づけることができる。また、船舶のコンテナ積み上げ等、様々な応用も考えられる。この研究テーマに対して、最終的には理論的な困難性と、多項式時間で解ける場合と、その具体的な解法アルゴリズムを与えることに成功した。さらに、現実的な時間で解くソルバも開発し、理論的に困難な場合でも、ある程度の規模まで現実的な時間で解が得られることを具体的に示した。このような理論上も応用上も重要な関連を持つ問題に対して得られた一連の研究結果は、問題の困難性と容易性の理論的な解析、さらには理論的な解析から得られる知見を活用した現実的なソルバの開発も含んでおり、本研究プロジェクトにおける重要な研究成果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ禍における状況において、論文の量・質ともに十分な研究成果をあげることができた。これは過去の研究活動を通じて構築してきた研究者ネットワークがうまく機能したことによる。ただし国際共著論文の数はやや少なめであった。また、国際会議等において、多様な研究者に対面で会う機会がなかったため、新たな国際共著論文につながる現場でのディスカッションや、それに伴う人的ネットワークの拡大という意味では、課題が残った。 また、特に後半はオンライン会議による共同研究にも慣れてきて、不自由な環境下であっても、ある程度の研究活動を進めるノウハウが溜まってきたことには、大きな意義があったと考えられる。具体的に、ハイブリッドな研究集会を開催し、重要な研究成果をあげられたことは、今後に向けての重要な成果であると考えられる。 今回の新型コロナ禍における研究活動を通じて、以前よりもオンライン会議システムなどの新しいツールを使う必要性が高まり、実際の使用を余儀なくされた。その結果、こうした状況下においても、ある程度の研究活動を進めることができるようになった。こうした新たなツールは、今後の研究においても可能な選択肢の一つとして活用できるようになったため、それによって、以前よりも効率よく研究が進められるようになると期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況でも述べたとおり、当該年度は十分な研究成果をあげることができたものの、国際共著論文の数は相対に多くなく、また研究グループ全体としてのコラボレーションも十分ではなかった。こうしたやや局所的な偏りのある研究成果は、いわば過去の貯金を取り崩しているような状況であり、過去の蓄積を活かした一時的な状況であると考えられる。 例えば上記の並べ替え問題に関する研究成果は、2022年6月にイタリアで開催されたアルゴリズムに関する国際会議に採択された。そしてこの会議はオンライン開催ではなかったため、研究代表者は現地参加して発表してきた。この会議は新型コロナ禍が明けて間もないころに開催され、当該会議に現地参加していた日本人は二人しかおらず、出入国には72時間以内のPCR検査が必要な時期であった。さらに帰国後には、空港で搭乗者全員のPCR検査が義務付けられていた時期である。 こうした困難な状況下でも、現地参加には大きな異議と収穫があった。今後、より活発な研究を推進するため、研究グループ全体での研究会の開催や、国際会議への現地参加、さらには対面による国際共同研究へと舵を切り、研究活動をグローバルな方向に推進する必要がある。 また全体的なバランスとしては、理論的な困難性を示すことと、多項式時間解法を与える結果は十分に得られたと考えられるが、そうして特徴づけた問題に対する現実的な解法を与えるには十分至っていない結果も見受けられる。こうした現実的な解法という観点からの発展的な研究も推進していく必要があろう。
|