研究課題/領域番号 |
18H04093
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉川 正俊 京都大学, 情報学研究科, 教授 (30182736)
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研究分担者 |
浅野 泰仁 東洋大学, 情報連携学部, 教授 (20361157)
中野 圭介 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (30505839)
鬼塚 真 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (60726165)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 協調分散システム / データ利用ポリシー / 一貫性保証 / 実体化ビュー |
研究実績の概要 |
本研究の目標である信頼性の高い自律分散環境の実現には,表現力の高い双方向変換言語が不可欠である.本年度は,一般的な双方向変換言語がもつべき表現力について計算論的アプローチによって考察し,その部分的な解として対合とよばれる関数に対する計算モデルを構築した.また,自律分散環境における更新伝播の不整合関係の検出アルゴリズムについても実装を進めた. また,時間変化するクエリワークロードの特性を捉えることで,スキーママイグレーションコストとクエリワークロードの実行コストを最小化するスキーマ最適化の研究に取り組んだ.特に,1) ワークロードを階層的に要約することで候補解を枝刈りする手法を考案し,2) 解を局所探索することにより大量クエリに対して高速に最適解を探索する手法を考案し,探索解の精度劣化を押さえながら最適化時間を1/10に削減できることを確認した. さらに,CDMSのアプリケーションとなるライドシェアリングサービスアライアンスの分散データ統合について研究し,3種類のモデル(集中型の調停者ビューモデル,非集中型のプロバイダビューモデル及びユーザビューモデル)を提案した.また,開発中の共有型実体化ビューアーキテクチャ(Dejima 1.0及びBCDS)によるこれらのモデルの実現性を明らかにした.差分プライバシを利用した分散環境における連合学習では,局所差分プライバシとシャッフルモデルを用いた手法を開発し,従来手法に比べ効用が大幅に改善することを示した.位置情報プライバシについては,利用者がどの位置同士は敵対者から区別ができないようにしたいかを示すポリシーを遵守しながら差分プライバシーを満足する手法を考案しプロトタイプを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の双方向変換言語は,双方向変換がもつべき性質(ラウンドトリップ性)が自動的に充足されるように記述できる反面,その制約により表現力が明らかではなかった.現在の研究ではこれを計算論的手法によって明らかにしようとしているが,ラウンドトリップ性の必要条件である対合や冪等といった性質の関数に対する表現力の限界について一つ一つ解明が進んでいるため,順調に進展していると考えられる. ワークロードのアクセス特性に応じて選択的にビューを実体化する分散クエリ処理最適化技術は,従来技術よりも1桁以上優れた精度を達成できる見込みである. CDMSの有用性を検証する上では,アプリケーションのプロトタイプ構築が重要となる.しかし,そのために開発中の共有型実体化ビューを用いてどのようにステークホルダーの分散データの統合を行い,どのようなシナリオでサービスを実現するかは明らかになっていなかった.令和2年度は,この点について深く議論し,実現性のあるデータ統合モデルとシナリオを構築することに成功した.したがって,進捗はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
自律分散データベースシステム(CDMS)の実現のためのデータ依存関係の形式化およびCDMSに適した高信頼双方向変換言語の設計を行う.また,複数マシン間でのコーディネーションコストを削減しながら,応用が要求する一貫性を満たす一貫性保証モデルおよび,ワークロードのアクセス特性に応じて選択的にビューを実体化する分散クエリ処理最適化技術を研究する.さらに,CDMSのプロトタイプとしてライドシェアリングサービスアライアンスに必要とされるデータ統合の仕組みを実装し,特に複数アライアンスに対してトランザクションの実用的速度での実行可能性を検証する.また,分散環境においてプライバシを保護しながらパーソナルデータを集約する手法を開発する.
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