研究課題/領域番号 |
18H04099
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
菊池 浩明 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (20266365)
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研究分担者 |
中川 裕志 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, グループディレクター (20134893)
渡辺 知恵美 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (20362832)
村上 隆夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80587981)
佐久間 淳 筑波大学, システム情報系, 教授 (90376963)
木村 映善 国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (20363244)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プライバシー / 個人情報 / 匿名加工 / 再識別 / ビッグデータ / 購買履歴 |
研究実績の概要 |
2017 年5 月の改正個人情報保護法施行により,本人の同意がなくとも第三者提供ができる「匿名加工情報」の利用が始まった.しかしながら,匿名加工に関するリスクには特定,識別,属性推定などの多様性があり,対象とするデータの性質や攻撃者の仮定に応じて大きく変動するために,標準的な加工方法を決めることが出来ない.そこで, 本研究では多くの研究者により加工技術の有用性と安全性を集積し,優れたアルゴリズムを探求するオープン型の評価コンテストを企画し,信頼できる匿名加工技術の開発を試みる.匿名加工に関する課題に対して,1. オープンデータベースの開発,2. 有用性指標の設計,3. 攻撃者の知識モデルと安全性指標の設計,4. 匿名加工アルゴリズムの開発,5. 位置情報の属性推定とテンソル分解による学習手法の研究,6. コンテストの評価環境の構築を研究目的としている. 2018年度は,課題1(オープンデータベース),課題2(有用性指標), 課題3(攻撃者知識モデル), 課題4(匿名加工アルゴリズム)に着手した.オープンデータベースとして,UCI Datasetの購買履歴データ Online Retail を取り上げ,コンテストに必要な属性を絞り,疑似顧客データベースと紐づけを行い,適切な大きさの標準データを用意した.このデータに対して,一般化(元データを含む集合に置き換える加工)に焦点をあてて,有用性指標を設計した.2018年10月には,情報処理学会コンピュータセキュリティ研究会主催のシンポジウムにおいて,匿名加工コンテスト PWS Cup 2018を実施し,国内のIT企業や大学から14チームが参加した.韓国インターネット情報院KISAからのオブザーバー参加も行われた.コンテストでは,主に2-匿名性を中心とした加工技術が競われ,その安全性を評価する為の確率検定に基づく評価方法を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って,購買履歴データを用いたコンテストを開催して,一般化に関する加工技術に関する多くの知見を得たため,十分に順調な進捗をしていると評価する.本課題の初年度ではあるが,これまでの研究グループの研究活動に基づき,4件のジャーナル論文を出版することができた.中でも,情報処理学会のディジタルプラクティスにて出版した論文は,2018年度の匿名化と再識別コンテストの技術的な内容とコンテスト結果に関する最新の内容である.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度には,課題5(位置情報を対象とした匿名加工)に着手する予定である.位置情報データベースには,オープンデータにも多くのものが知られている.顧客の位置に応じて提供する商用サービスや,観光客を対象としたイベントを立案する地方自治体などによる多くのユースケースが想定できる.これらを想定して,どの様な有用性指標を定めるのか,安全性をどう定義するかなどを検討する予定である.2019年10月に長崎で開催予定の,コンピュータセキュリティシンポジウムにおいて,匿名加工コンテストPWS Cup 2019を開催することを計画中である.
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